神楽坂で初めてその人に会った夏のある日

浴衣姿からいい匂いがほんわかして、まだ中学生の私は

ドキッとしたその感情を父に見破られないよう、澄まし顔で挨拶した。

きちんと背を伸ばして座っていないと、何か居たたまれない厳しさのある人だった。

自分が30歳を過ぎて漸くいろいろ見えてきて辻褄が合うようになった。

その人の美しさは70歳近くになっても衰えなかった。

若い頃はいったいどんな感じだったのかしら。

厳しく感じていたものは、それは作法であり、

彼女のプライドであり、生き様であり、

そして、深い部分での愛であった。

その人が亡くなってから、半年も経たないうちに

父も逝ってしまった。

「あの人。。。若い頃相当綺麗だった?」

病室で父と二人のときに尋ねたことがある。

「泣く子も黙る・・・と言われたほどだったよ」

嬉しそう、ニヤリとした。

東京は昨日お盆の入り

迎え火もあまり見なくなった。