ナースステーションで、面会者ノートを記入していると

顔馴染みの看護師さんが何とも複雑な笑みをたたえて

近づいてきた。

「実は昨日、ちょっとした事件がありました。。。」

それは、夕方4時くらいのこと

ナースステーションのカウンター前を

通る美智子に声をかけたそうだ。

「売店に行かれるのですか?」

そこは都内の大病院

もう何年も前、小渕総理が脳梗塞発症の際、

緊急に入院したその病院である。

院内には神田駿河台にある山の上ホテルが

レストランを出している。

食前の血糖値が500近くになり、このままにはしておけないと

家族はあわてた。

糖尿病食事療法のため、入院していた美智子は

ドイツの高級タオルウェア『フェイラー』のロングガウンを羽織り、

イタリア製ゲラルディーニの小さなバッグを小脇に抱えて

姿勢よく、まっすぐ、毅然と歩いた。

空腹にたえかねた美智子は、山の上ホテルで、

ビーフステーキのディナーコースを注文するという

快挙を成し遂げた。

跳ね上がった血糖値に、担当看護師さんは驚かれたことだろう。

かなり、すごい母、美智子のひとつのエピソードである。



ワタシにはその遺伝子が流れている  女の子