先日、たまたま閲覧していたYouTubeで、宮原巻由子(みやはらまゆこ)さんが歌う「鳥の詩」のカヴァーに聴き入る機会がありました。
杉田かおるさんによるオリジナル(1981年)の印象が強く、また、カヴァー曲の存在も知らなかったので、新曲に触れたような感覚を受けました。
眠っていた楽曲が再び目を開く、新鮮なリバイバルといったところでしょうか。

追って、宮原さんについて調べてみたところ、かつて日本テレビで放映されていたオーディション番組【スター誕生!(1971年~1983年)】の末期に合格し、「花明り」という曲でデヴューしたものの、二十代前半で早々にマイクを置き、芸能界も引退。
その後は、モデルや翻訳家として活動中の様子です。

多少、声質の存在感は弱いような気がしますが、若さゆえの瑞々しいトーンが思いの外に伸び、胸のすくような体感を覚えます。
オーディションのファイナリストの座を射止めただけあって、その歌唱には心地よい抑揚があり、秀逸な感情移入の冴えも見え隠れします。
当時、わずか数年前の誰か彼かの色のついたヒット曲を与えられることは、彼女にとっては不本意だったかも知れませんが、真摯に楽曲の世界観に向き合い、歌い上げる姿勢が伝わるようで、オリジナルとはまた違った次元の仕上がりです。
もちろん、※坂田晃一(作曲)&阿久悠(作詞)が手がける原曲の魅力があってのことなのですが、歌い手による別の表情を知るのも趣があります。

 
◆『Be‐vap アイドルスクール 1学期 1982~1984』(2017年6月リリース)

このコンピュレーションCDには、宮原さんの他にも4名、1982年~1984年の期間に活動していた、いわゆるアイドルのシングル曲が収められていますが、何分にも、自分はそういうアイドル文化には疎く、関心も向かないため、各楽曲や人物についてのこれ以上の言及はひかえたいと思います。
※個人的に、宮原さんが歌う「鳥の詩」のみをターゲットに、このCDを購入しただけなので。


^※
このコンピュレーションが発売されるまで、宮原さんが歌う「鳥の詩」と「花明り」の7インチ・シングル(アナログ盤)は、中古市場ではプレミア値がついて取り引きされていたようです。
欲しいと思った矢先に手に入れることが出来たのは、タイムリーでした。

^※
「鳥の詩」は、坂田晃一に特有の、淡く優しい感受性を、端正な作風で仕上げた名曲です。
民族音楽を思わせる素朴なリコーダーの調べが、そよ風のように舞い、郷愁の彼方へと向かう心に寄り添うようです。
彼が手がけた「母をたずねて三千里(1976年)」のテーマ曲にも、同じ匂いがしますよね。

一頃、日本の音楽文化の一時代を席巻した歌謡曲の世界には、俗物的で短絡的なパターンに甘んじる演歌というジャンルが顔を利かせ、北原白秋(きたはらはくしゅう:1885年1月25日~1942年11月2日)を源流とする、本来の日本の詩情豊かなメロディが分断されてしまっていたように思えます。
そんななかで、坂田晃一、小六禮次郎、小林亜星、すぎやまこういち、冨田勲、武満徹など、幅広い視野を持ちながら、日本のメロディを守り、可能性を形にした音楽家の功績も見逃せません。(敬称略)

 

「鳥の詩」#1(1' 20'')
http://youtu.be/iKyvIArQAI0


「鳥の詩」#2(3' 51'')
http://youtu.be/UdZWlWJVV4g