あもん家の長い5日間 ⑲ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

1215日 朝

 

今日は朝から葬儀・告別式である

基本的な流れはお通夜と一緒で淡々と事は進められていった

担当者の言う通り、あもんはあまり寝ていなかったので少し眠かったが

長男として父を立派に見送らなければという一心であった

 

『ねぇ、アイカ、お通夜の後、悲しくて泣いとったん?最後にじぃじの顔を見て思い出したん?』

とあもんはアイカに聞くと、コータが返事をした

『アイカ、式の途中から泣いとったで~』

『えっつ、そうなん?何か思い出したん?』とアイカに聞くと

『違うんよ!あっくんの挨拶が泣けるんじゃけん!!』

『えっつ、そうなん!今日も親族代表挨拶するけぇ、昨日より長いで~しっかり泣いてもいいで~』

『うん♪』

 

アイカはこの数日間、本当によく泣いた

本当によく泣いて、本当によく笑った

大好きだったじぃじが旅立つことを知った時から、悲しい涙が多く流れた

それは、悔し涙ではなく、はぶて涙でもなく、駄々コネ涙でもなく、うそ泣きでもない

アイカは以前から女優のように色んな涙を演じていたが

ここ数日は悲しいから涙が出ているのであろう

本当はどこまで現実が分っているのかは不明ではあるが

大好きだった人の命が無くなったことに悲しむことで

命の存在を意識するようになり、命の儚さと大切さを体験することになる

ニュースで見る悲しい出来事での命ではなく

つい数時間前まで暖かかった手が一瞬にして冷たくなると言う悲しさを体験したのだ

アイカはあの時、吐きそうに泣きながら、父の両手両足とおでこを必死にさすった

必死にさすればまた、暖かくなるんじゃないか?と思ったうえでの行動であろう

 

命の儚さと大切さを父は命をかけて教えてくれた

これはアイカにだけではない

あもん家全員に父は最期に教えてくれたのだ

 

葬儀告別式は淡々と進められた

流れはお通夜と同じ感じだがお寺さんのお努めの内容は違っていた

参列者は昨日参加して頂いた方が多数だったので、お念仏も戸惑うことなく唱えられた

ご焼香を終え、お寺さんが去った後はあもんの親族代表挨拶である

あもんは再び皆さんにお辞儀をし、挨拶を読んだ

 

本日はご多忙の中、父のために御会葬下さいまして、

誠にありがとうございます

生前中は、皆様方より格別なご厚情ご愛護を頂きまして、

誠にありがとうございました

心から厚くお礼申し上げます

 

父は今年の一月に体の不調を訴え、病院での検査の結果、

悪性胸膜中皮腫と診断されました

その後、入退院を繰り返しながら、3回の抗がん剤治療を受け、

次は手術の予定だと言われていましたが

年齢的なことなどの事情で、今後の手術や抗がん剤治療ができない状態でした

 

その結果、緩和ケア病院を紹介していただき、転院をしました

環境が変わったことや、素晴らしい医療スタッフ皆さんの誠意のおかげで

転院当初よりは見違えるほど元気となり、家族は驚くばかりでありました

これは父に“病に勝ち、生きるとういう気力”があったからだと思います

しかし、病は確実に進行していき、闘病の甲斐もなく12日に旅立っていきました

 

我々家族にとって、幸いだったとことは旅立つ瞬間までの約半日間

家族みんなで過ごせたことだと思います

ここで父は、意識を失いながらも、必死に息をしようと頑張っていました

家族の問いかけにも、力ある限り、必死に答えてくれました

そして最後は、とても安らかに、苦しむことなく旅立っていったと思っています

 

この時父が家族に見せてくれた“生きるということ”は

父から家族に対しての、最後の教えだと思っています

我々家族は、この大切な教えを、後世に残していくのが務めだと思います

 

しかし少し、“最後の教え”が早かったです

もう少し、多くの事を教わりたかったです

これも天命だとあきらめ、冥福を祈らないといけないのですが

残された者としては寂しい気持ちでいっぱいです

 

この場をおかりしまて、

父が生前一方ならぬお世話になった皆様にお礼を申し上げます

本当にありがとうございました

 

簡単ではございますが、皆様のご健康を祈念いたしまして、

親族の代表として、お礼の挨拶とさせて頂きます

 

本日は誠に有難うございました

 

アイカはあもんの挨拶を聞いてまた泣いていた

 

そして、最後は父との別れである

親族だけが式場に残り、棺桶の中に花を捧げた

あもんも親族も皆、父に言葉をかけて花を捧げた

アイカはここでも泣きながら大きな花をたくさん捧げていた

 

父は今から霊柩車に乗り火葬場へ向かう

霊柩車に乗るのは母とあもんと姉ちゃんだ

あもん達が乗り込むまでアイカはテクテクと後ろを着いてきたが

姉ちゃんが『アイカはダメ!パパと車で来んちゃい!』と一喝し車のドアを閉めた

するとアイカは霊柩車の後ろでまた泣き始めたのだった

『アイカもじぃじと一緒に行きたいの!』と言いながら泣きじゃくるアイカ

その大泣きを見た平穏葬社の係員が『お子さんなら大丈夫ですよ~』と車のドアを開けた

しょうがないからとアイカを乗せたら、アイカは父の遺影を持ち泣きやんだ

ドアを閉めようと思った瞬間、コータが走って入ってきた

『なんで、コータも!』と定員オーバーを気にしたが運転手さんは大丈夫と言う

コータは『えへへへへ』と笑って、あもんの膝の上に座った

 

もしかして、二人は。。。。。

演技をしたんかい!!

と、心の中でツッこんだ