12月11日 朝
夜勤明けから帰ってきた朝、母があもんに話しかけた
『お父さん、急に動悸がする言うてから、、チューブのお薬で落ち着いたんじゃけど、、』
『えっ?昨日のクリスマス会では普通じゃったんじゃろ?』
『そうなんよ、じゃけど、終わったら急にね』
『まぁ、今日起きたら、行く予定じゃったけぇ、行くわ、、誕生日会の時の写真、見せてやろうと思うて』
お風呂を済ませたあもんに再び母が言った
『さっき、電話したら、な~んか、苦しそうだったけぇ、行ってくるわ』
あもんも夜勤明けでフラフラだったので、深い眠りに落ち昼過ぎに目が覚めた
12月11日 昼
目覚めたあもんは2週間前の誕生会の写真をプリントアウトアウトして支度をしていた
『あっくん、父さんがしんどそうじゃけぇ、来てくれないかな?』
姉ちゃんからラインが来ていたことに、出かける前に気づいたあもん
よく見ると、母さんからも着信があった
『どうしたんじゃろ、クリスマス会で疲れが出たんじゃろうか??』
病院に着くと遠く、姉ちゃんとアイカが見えた
姉ちゃんはハンカチを顔に当てており、アイカは何故か大泣きしていた
父の容態が気になるので、あもんはそれを無視して病室に向かった
病室に入ると父は看護師さんの手によって薬の準備をしていた
よく見ると首の血管から点滴を刺している
『どしたん?父さん、しんどいん?』
父はあもんの顔を見ると少し頷いた
父は見るからにしんどそうだった
『あっくん、ちょっと』と病室の玄関から母が手招きをしていた
片手にはハンカチを持っていた
『先生がね、ちょっとお話がある言うて、あっくんも聞いとって、、』
『うん』
面談室に向かう途中にアイカが見えた
アイカはあもんに気づかず、フラフラと彷徨いながら泣いている
姉ちゃんは奥の机に座り、顔を伏せていた
『息子さんでしょうか?』『はい』
『今、お母様と妹さまには伝えたのですが』
『お父さんのご容態、ゆっくりと下降気味だったのですが、急下降になったみたいです』
『えっ?でも、昨日までは普通だったんでしょ?』
『はい。以前、お伝えしたのでご存知だと思いますが、、』
『お父様は入院当初から下降が始まっておりまして、その速度は我々にも予想できないものなのです』
『当初は9月末もあり得るとお伝えしましたが、お父様は私からしたら驚くほどに下降がゆっくりでありました』
『お父様は頑張って、生きようとしたのです』
『ご家族様から見れば、それは回復と思われがちですが、やはり下降はゆっくりと進んでいるのです』
あもんは病状を知ってはいたものの、父の姿や行動から、下降が進んでいるとは思っていなかった
もしかすると、このまま、治るんじゃないか?とも思っていたのであった
『でも、2週間前に家に帰って来た時には酸素も外して数時間笑っていたし、、』
『気が付いたら、自力で2階の自分の部屋に行っていたんですよ、気になる言うて、、』
それを聞いた先生は驚きの表情をして
『はぁ、そうでありますか~それは驚きですね~』
『あの一日退院が、お父様にとってすごく良かったことだったと察します』
『先ほど、妹さんにも、伝えましたが、今日一日が山だと思われます』
『妹さんも信じられないご様子だったのですが』
『先生、妹じゃなく、姉です!』母がさりげなくツッコんだ
『それは、失礼しました。とにかく、時間があるなら、どうか、お父様とご家族での一緒の時間を作ってあげて下さい』
『こんな宣告をしたのですが、ご家族一緒の時はどうか下を俯いて暗い表情などせずに、』
『いつもの家族のように普通にワイワイと過ごしてあげて下さい』
『お父様はいずれ、声が出せなくなると思いますが、ちゃんと聞いていますから』
『家族がワイワイと騒いでいればきっと、安心するでしょう』
『あと、何か心配なこととか、ありますか?』
『いえ、ありません。ありがとうございました』
『はい。何かあったら呼んでくださいね』
と先生が言ったあと、あもんと母は面談室を出て父の部屋へと向かった
アイカと姉ちゃんはどこに行ったのか、見当たらなかった
続く