僕は今 歩いている | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

伝えたい言葉があるんだ
ひと足さきに生まれた僕たちが
ひと足あとまで生きる君たちに
伝えないといけない言葉があるんだ
気に入らない言葉はマジックで消しておくれ
たったひと言でも伝わればいい
君が君にとってのやじるしを
見つけられたら もっといい



僕は今 歩いている

ヨーイドンと生まれたその日から
歩む道が目の前に広がっているから
僕は自分の道を自分で歩むことを決めたんだ
道には数えきれない三叉路があり
甘いハーゲンダーツの香りが漂う道や
キラキラ輝く真珠が転がっている道や
けもの道と化した廃路があって
ちょっとうろたえたりもしたけど
閃きだけを信じて道を決めたんだ
迷っていたら道は続かないよ
と 誰かが言っていたからね


徒競争をしているOLに抜かれ
ナナハンバイクに乗る小学生を追い越し
なす田楽を食べているサラリーマンに呼び止められたり
この木なんの木の枝についているイチジクが欲しくて木登りしてみたり
落とし穴にわざと落ちて泥んこになってみたり
右手と左手でじゃんけんをして
チ・ヨ・コ・レ・イ・ト と大股でスキップしてみたりもした
いっぷくする時に上映した「自分の歩んだ軌跡~出会い編~」で
元元カノとの出会いに三度赤面したから
次のいっぷくで上映させるのは「自分で歩んだ軌跡~別れ編~」の
違う道を歩んだ親父との別れにしよう
自分史は今も録画中だから
けっして飽きることのない 僕の道
自分史には正解も不正解もないものだから
けっして恥ずることのない 僕の道
出会い・成長・別れ
その三段活用を繰り返す
そして 僕は今 歩いている


時折送られてくるお袋からの手紙に力をもらい
寂しい時に思い出す姉貴の笑顔に励まされるのは
大人の階段を三三三三段登った今の僕でも
変わることのない愛の欲求と気付いた二十八の春では
たくましかった親父の背中がいつの間にか猫背になっていくのを
見るのが怖くて 全力疾走で自分の道を走っていた
必死に自分を探そうと
トライアスロンにまで出場して無茶を続けていた
ころび、ころがり、はいつくばって
親父の見ていない世間を実現させたかった
三十年歩み続けてきた頃だろうか
背中を向いていた父を分かろうとし始めたのは
どこかで尊敬していたことに気づいたからだ


それからというもの
僕の道は徐々に道幅が広くなり
歩むスピードは徐々に遅くなり
何度も後ろを振り向くようになった
「こっち向いて こっちおいで」
僕の道でこだまする 慈しみのことば


そして 僕は今 歩いている
自分の道にいつかは見えてくる
本当の親父の背中に
会える日がくるまで

そして 僕は今 歩いている
自分の道にいつかはたどり着いてくれる
未来のこどもと
手をつなぐ日がくるまで