あもんのええねん | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

あもんは健康診断が嫌いである

あもんはれっきとした“おっさん部類”に入るため
健康診断区分は生活習慣病コースである
循環器、呼吸器、消化器、尿便、血液としっかり診断コースである
健康診断の何が嫌いかと言うと“朝ご飯が食べられないこと”である
あもんはパン一枚でも必ず朝ご飯は食べるようにしている
それを健康診断が終わるまで水しか飲めないなんて酷過ぎる
朝食は元気の源であるため健康診断に臨むあもんはいつも元気がない
健康診断を受ける時は健康なハズが無いのである


そして次に嫌いなのが“採血”である
別に針でチクッとするのが怖いわけではない
あもんは採血をされると目まいがするタイプなのである
もともと血を見るのは好きではない
だから決して頼まれても医者にはなろうとしない
TVドキュメンタリーも手術シーンには眼を覆うようにしている
そんなあもんは数年前、採血時にマジマジと自分の血を見てしまった
意外に赤黒いと思い、見る見るうちに溜まっていく自分の血を見て
あもんを目まいが襲ったのである
だから献血という善意行為はあもんには無理なものである
“それどころじゃない”からである


もちろん、採血時に看護婦さんは聞いてくれる
『今までに、気分が悪くなったことありますか?』
あもんは必ずこう答える
『はい。目まいがするタイプです』
それを聞いた看護婦さんはいつも優しい
『じゃぁ、別室でどうぞ』
とあもんを個室に連れていくのである
『横になってください♪』
それを聞いたあもんは思わず鼻から血がでそうになる
『ちょっと、チクッとしますよ~大丈夫ですよ~』
『あもんさん~ちょっと、我慢してくださいね~すぐ終わりますからね~』

看護婦さんはまるでチクッとを怖がる小学生に注射を打つように接してくれるのである
『は~い。終わりました♪しばらく横になってくれても構いませんよw』
看護婦さんは最後まで優しい
その優しさにあもんは年を重ねる度にそれが恥ずかしく思ってしまう始末である


そしてもうひとつ嫌いなのは“バリウム検査”である
あもんはここ数年前から始めたバリウム検査を始めたのだが
確かに昔のバリウムのマズさは感じない
がしかし、美味しくも無い
そしてあもんがいつも苦戦するは発泡剤である
『ゲップは我慢してくださいね~』
と言われてもその我慢に苦戦するのである
その上、我慢している時に人の身体をグルグル回してきやがる!
胃の中のバリウムが踊っている感触がなんとも気持ち悪い
思わず我慢できなくてゲップをしてしまった時には
『もう一度、バリウム飲んでくださ~い』
と再びあのグルグル地獄を味わうのである
診断が終わり渡される下剤はあもんにはあまり効かない
何か残っている感を一日感じてしまうのである
しかもその日から数日間は白いモノが残っており
便器を覗き『まだ白いじゃん!』と憂鬱な日々が続くのである


そんな感じであもんは健康診断を受けると疲れがドッとでる
あもんはいつも思うのである
『健康診断で不健康になった気がする』


今年の健康診断結果があもんの手に渡された
そこであもんは生まれて初めてE判定を頂いたのである
“更に詳しい検査が必要ですので、専門医に受診してください”
健康診断結果にはそう書かれてあった


あもんがE判定を頂いたのは白血球である
白血球が基準値より多い判定を頂いたのである
思い返せば約10年前
あもんは過労でこの白血球が異常増殖した
その時は立っていられなくなり後に通院となった
先生は抗生物質を点滴してくれたが白血球の数は減らず
何種類もの抗生物質を試した結果ようやく落ち着いた


白血球は感性予防の為にバイ菌と戦う血である
なるほど、あもんらしいと言えばあもんらしい
日々、情熱を燃やし戦っているのは血から戦っていたのか
血潮が燃えるとはこういうことを言うのか
しかし、裏返すと戦士が増加しているということは敵も増加しているということで
何かの菌があもんを襲っているのも事実である
あもんは意外にも手洗いうがいはきちんとするほうで
冬でなくても風邪を引いてなくても一日2回はうがい薬でうがいをする
毎日ハンカチがビチャビチャになるくらい手洗いをするのであるが
一体何の菌があもんを覆っているのだろう


もしかして、あもん菌?

あの調子に乗ると突っ走り自爆するあもん菌なのか?
どんなにホームランを連打されてもストレートを投げ続けるあもん菌なのか?
そのあもん菌とあもんの白血球は戦っているのか?
しかも調べてみると白血球は調子に乗ると赤血球も退治しようとするらしい
大事な酸素運搬係である赤血球を襲うとは何事だ!
あもん白血球よ!どうか暴走だけはやめてくれ~~



あもんは総合病院に再検査に行くことに決めた

『あもんさ~ん、お熱と血圧測りますね~♪』
ちょっぴりタイプな看護婦さんがあもんの前に現れた
『あれ~ちょっと、熱がありますね~体調悪いですか?』

『いえ、あなたがタイプだったから少し熱っぽいです!』
そんな台詞が言えるほどあもんは器用ではない
『いえ、絶好調です!』
これが精一杯のあもんの台詞だった
『ウフフ』とちょっぴりタイプなナースが微笑んでくれたからそれで十分だった


血圧を測ってくれる人はギリギリストライクゾーンから外れた人が丁度良い
あもんは過去に『あれ!今日は血圧高いですね~』と何度も言われたことがある
それは決して体調が悪いのでは無く、緊張で興奮しているからである
しかし、今回は何とか理性を取り戻したのだが
微熱が生じたことは不覚であった
あもんは元気である
元気であるが病院にいる


フラフラで病院に行った時に優しく介抱してくれる看護婦さんはマリアのように見え
的確な判断で検診をしてくれる先生はゼウスのように見えるのはあもんだけだろうか
そして何の自覚症状も無い時に“ちょっとおかしいですよ”と言われたら
先生がノストラダムスのように見え瞬く間に信者となっていくのもあもんだけだろうか
あもんは予言者が言われるがままにレントゲン室で撮影を行った
『ん~なんか、白く見えない?』
予言者はあもんに尋ねてきた
『こらぁぁあああ~予言者が信者に聞くなぁぁぁああ~』
『そんなん!分かるわけないじゃん!』

と言おうと思ったがノストラダムスには逆らわない方が身の為であろう
『そんな気がします…』
と、やっぱり服従してしまったあもんであった
『念の為に抗生物質を点滴しときましょう』
あもんはノストラダムスの大予言が当たらないことを願いベットに横になった



『ちょっと、チクッとしますよ~』
気が付くとあのちょっぴりタイプなナースがあもんの腕を持っていた
『力を抜いてくださいね』

と言われたが、無理である!
何故か被っているマスクを取ってくれと言いたくなった
しかしちょっぴりタイプなナースは事務的にその場を去っていった
あもんは慣れないせいか点滴が苦手である
あの身体に入っていく感がどうにも気持ちが悪い
少々の痛みと不快感を感じたがあもんも大人であるためそれを我慢をした


しばらくするとアイコ似の看護婦さんが現れた
アイコ似とは髪は茶色のボブで顔は丸く白い、目鼻立ちはあまりはっきりしない女性である
それに少し枯れた声で人懐っこい関西弁を話すとアイコ激似となる
あもんの統計によると大阪ではアイコ娘は生存率が多い
大阪のおばちゃんに匹敵するほどの大阪娘の代名詞としてもいいのではないかと思う時がある
この病院にもいたアイコ娘はあもんの点滴を眺め言った


『漏れてるやん!』

『あもんさん、痛くなかったですか?』


何ぃィィいいいい!
あのちょっぴりタイプなナースは血管を外していたのか!
どうりで気持ちが悪いと思った
でもあもんは大人であるためナースコールは押さなかった
しかもあもんは色白で血管の青さがはっきり分かる腕をしている
これまでの採血でも成功率は10割を保っていたのに
だからあもんはちょっぴりタイプなナースを信じていたのだ!



『外れることはたまにあるんですよ』
『ちょっと、膨れているけど、吸収しますから大丈夫ですよ』

アイコ似ナースはそうあもんを慰めてくれた


『一回、外しますから』
『また、ちょっとチクッとしますからね~』

何ぃィィいいいい!
チクッとアゲインかぁぁっぁあああ


全国にチクッと苦手症候群が多いのは小学校の予防接種にあると思う
体育館に一列に並び一歩一歩チクッとに近づいて行くという経験が原因だと考えられる
チクッとだから痛くない訳は無い
しかしみんなは先陣を切った勇者に聞くのである
『痛かった?痛かった?』
勇者を名乗りあげたからにはそこには意地がある
『全然!』と言いつつ汗が流れているのをあもんは見逃さなかった
チクッと刑はひとりづつ行われ、一歩づつ緊張は高まっていった
ある時、ひとりの悪者がチクッとに挑んだ
その悪者は『痛ってぇぇぇぇええええええええ!』と叫んだ
そこまで痛くないのにオーバーアクションで痛がるのである
その悪者は十分に痛がった後にあもんに向ってニヤッとしてその場を去っていった


アイコ似ナースはベテランなのか安定感のあるチクッとをしてくれて
あもんはしばらく点滴を眺める時間を過ごした
そしてアイコ似ナースは他の患者さんに目を配りさり気なく日常生活のことを聞きだしていた
『すみませ~ん』という声が連呼し始めた
きっと誰もがヒマなのであろう
一滴一滴しか動きが無いこの天井の風景に飽きが来たのであろう
アイコ似ナースはみんなの質問に親しみのある関西弁で返していた
もしこのアイコ似ナースがここでカブトムシを歌うと誰もが涙するであろうとその時思った


そして点滴が終わった後あのちょっぴりタイプなナースは
『おつかれさまでした~♪お大事に~~w』
とあもんを微笑んで見送ってくれた
あもんは『ありがとうございました』と素直に頭を下げた

血液検査の結果は一週間後ということであもんは総合病院を後にした


約一週間後、あもんの血液検査の結果が出た
あもんは再びあの総合病院へ向かった


控室で座っていると『あもんさ~ん』とあのちょっぴりタイプなナースが向ってきた
先日と変わりない制服とマスクのちょっぴりタイプなナースは微笑んだ
『血圧測りますね♪』
あもんは不意を突かれた思いだった
まさか椅子に座って5分もしないうちにあのちょっぴりタイプなナースが目の前に現れ、あもんの腕を握るなんて!
まだ、心の準備ができてないじゃないか!!
しかも、この再会で“ちょっぴり”という副詞は“ガっつり”に変換されいるじゃないか!
これでは血圧で異常値が出てしまうではないか!!
なんとか落ち着かなければ…
その戦いをする中、ガっツリタイプなナースは事務的にあもんの腕を触る
ひと時の静寂があもんの緊張を更に上昇させる
そして、案の定、 『ちょっと、高めですねw』とガっツリタイプなナースは言った
そして、そそくさとあもんの前を去っていった



土曜日午前中検診のみの日であるため
あもんはかなりの待ち時間があると予想したのだが
意外にもあもんは優先的にガっツリタイプなナースに呼ばれた
『あもんさ~ん♪今日は検査結果を聞きに来たんですねw』
この言葉であもんは彼女が血圧を測る必要性が無かったことに気がついた
そしてそれから、それは“わざとなのか否”かを考えるようになり
“彼女はあもんに近づきたいがために血圧を測ったのではないのか”との妄想に発展された
更なる発展を期待しつつあもんが待合室で待っていると

『あもんさん、どうぞ』
と渋い声の先生に呼ばれた
『くそっ!』と思いながらもあもんは先生の往診を受ける部屋に入った
今日の先生は先日の老人先生とは違い40代後半のようだ
キリっとした眼鏡に整えられた髪型がエリート先生の様相を感じさせた
病の告知によくある先生のひと言が似合いそうな雰囲気を創り
冷静にかつ慎重に、重い病名を告知するのが得意そうでもあった
エリート先生はあもんの顔色を見ることなく話し始めた


『お元気ですか?』


『えっ、はい、元気です』


『結果は異状なしです。大丈夫でしょう』
『はい。もう帰っていいですよ』




あもんの健康診断再検査物語は
このように呆気なく終わった





これから、
『不治の病と情熱的に戦うあもん』の章に続くかと思ったのに!
『ちょぴりからガっツリに変換されたあもんの心の発展と自爆』という章に続くかと思ったのに!
『既婚者と思われるアイコナースとの秘密の約束』なんて章も密かに隠し持っていたのに!


あもんの健康診断再検査物語は終わった

そして今
来年の健康診断が少しだけ楽しみでもあった