あもん史 第四十七章 血潮 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

あもん達第30代海田高校応援団はラストスパートを掛けていた

己が己の力で己を超え
血潮が燃え尽きたその後に
己は没我の先にたどり着く
己の魂を朋に伝えられれば
感動は不滅と成り得る


あもんは創作太鼓・喧嘩太鼓を完成させるために情熱を注いでいた
ナゴPからもらったビデオをテープが伸びるまで観賞し
技を盗みノートに記し、リズムを創造しバチを振った
技を自分の身体に染み込ませたら後輩へ教え
全員が共感できるまで何度も何度も太鼓を叩いた


そしてようやく喧嘩太鼓が出来上がった

モチさんという先輩がいた

モチさんは第26代海田高校応援団員であり
あもんより5つ上のOBの方だった
モチさんの時代はまさにビーバップ実写版のような時代であり
その中で応援団として学生生活を過ごして来た方である
当時の写真を拝見させてもらったが写真だけでも情熱が感じられる
モチさんは訳があり現役卒業をしてない方であった
しかしモチさんはあもんが2年生の時に3年生として学生復帰し
勇ましく卒業をされた方である
学生でありながら応援団のOBであった為
あもん達第30代はモチさんによく可愛がられていた


モチさんの第26代は幹部が5人おり
モチさんは第26代海田高校応援団統制長であった
団長、副団長、親衛隊長、リーダー長、統制長という布陣である
あもん達は団員数が少なかったため統制長という幹部はいない
応援団の長い歴史の中でも統制長という立場は数えるぐらいである
あもんは想像するしかないが
ビーバップ応援団を統制するというのはかなり気合のいることであっただろう


COMPLEX
『BE MY BABY』


(吉川君はあもんの遠い先輩です)

そんなモチさんは練習以外の時はいつもニコニコしており
あもんに向かって
『お前~なんでいつも眠そうにしとんや?おぉ!そんな顔なんじゃな~』とか
EIGに向かって
『お前の歩き方はゴリラそっくりじゃぁ!ある意味迫力あるで~』とか
ボブ西に向かって
『お前シコり過ぎなんじゃないんか?サルになったら疲れるで~』とか
たっひーに向かって
『最近、小便のキレが悪いんじゃ~お前もそうなってくるで~』とか言って
いつも『あははははは』と笑っていた
カラオケに一緒に行くと
コンプレックスの『BE MY BABY』を選曲し
曲が始まると『お前ら~突きの練習じゃ~』と言いつつリズムに合わせ突いて見せた
カラオケ時間終了の電話が鳴ると
真っ先にリモコンを耳に傾け『モシモシ~モシモシ~聞こえんで~』と首をかしげ
全員大盛り上がりの曲の途中でプツッと曲を切り
『あははは』と逃げるように部屋から出ていったりしていた


そんなモチさんの情熱はあもん達に伝わり
あもん達も後輩へ伝え続けていった


BOOWY
『マリオネット』



モチさんが練習の時いつもあもん達に言っていたことがあった
『ええか~演技は始まりの“押忍”で決まるんじゃ~』
『初っ端でどれだけ観客を振り向かせるかが勝負じゃけぇの~』
『ほんで、なんぼ疲れた言うても、演技が終わった後の“押忍”は気合いれんにゃ~いけん』
『締めの“押忍”でみんなに感動を与えるもんじゃ!』


モチさんの応援道は一言で言うと“押忍”であった
謙遜しつつ圧倒的存在を知らしめる“押忍”こそが
没我へ向かう第一歩であり
その一歩さえも歩めない演技は
どんなにリズムや型が素晴らしくても
感動を与えることは出来ないということである


実際に第26代応援団のビデオを見てみても
モチさんの“押忍”は体育館を震撼させるほどの迫力がある
モチさんはきっとこの“押忍”で応援団を統制していたのであろう


あもんは喧嘩太鼓を創作するに当たって
一切、OBの方に相談をすることが無かった
OBの方に客観的な意見を頂くのは大切なことであったが
『和太鼓が感動を与えるのか?』という下馬評が流れていたせいか
あもんの挑戦心とプライドがそうさせたのであろう
しかし、あもんは創作太鼓が出来上がったときモチさんに言った
『モチさん、創作太鼓できたんで見てくれませんか?』
モチさんは『おうっ』と軽く返事をし
厳しい眼差しであもんの演技を見た



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演技を見終わったモチさんはあもんに言った
『おい、これ見てみ~!』
モチさんはあもんに右腕を差し出した
差し出されたモチさんの右腕には多くの鳥肌が立っていた
『あもん、わしゃ~久々に鳥肌が立ったで~』
『お前の演技はええ演技じゃと思うで!』
あもんは『押忍!』と返事をした



次にあもんの演技を見せたのは海田高校応援団初代団長であった
初代団長はあもんの親父ぐらいの年齢であるが
海田高校応援団を現在も変わらす愛されており
あもん達の良き指導者として応援道を伝えていた
応援団員にとっては第2の親父のような存在である
現在でも海田高校に赴き現役応援団に指導をしてくださっている


あもんが創作太鼓をやりたいと初代団長に言った時
初代団長は少し苦い顔をして言った
『和太鼓か~ワシには教えられることは無いかもしれんの~』
それを聞いたあもんは何故か血潮が煮え始めた


親父がまだ見たことのない演技を創ってやるだと

あもんは初代団長に演技を見せた


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演技を見終わった初代団長はあもんに言った
『よっしゃ~和太鼓の演技に動きをつけたことは見事じゃ!この演技なら観客を頷かせることができるかもしれん』
『じゃけどの~あもん、クライマックスで高揚させたリズムのままで終わったら、なんかもったいなの~』
『高揚感の次に与えんといけんのは余韻じゃ!』
『気合と間を上手に使い余韻を与えるリズムを最後に加えればいい』
『ワシが教えるのはそれだけじゃ~』
あもんは『押忍!』と返事をした


BOOWY
『Dreamin’』





そんな血潮を燃やしていたのはあもんだけでは無かった
引退を控えている第30代は全員、若き血を燃え上がらせていた