一日三十六時間の島 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

最高のテスト会場となるこの粟国島で

僕は勢いに乗り次なる問題に挑戦した

次の問題は「一日の時間」だ

これまでも何度も挑んでいるこの問題はかなり難しく

ドラえもんにタイムマシーンを借りて過去で勉強しても

ドラえもんにどこでもドアを借りて楽園で勉強しても

解けなかった

この問題を解くために僕はこの島の宿犬を講師に迎え

教わったことをこうノートに記述した

 

民宿の隅につながれているこの犬は

伸びっぱなしの毛並みでも

嫌な匂いは全然しなくて

とても番犬とは言えぬほど愛嬌がよくて

僕をかわいいしっぽで迎えてくれて

初対面とは言えぬほど図々しく

なでてやると気持ちよさそうに

お腹を見せるほど服従を見せ

歩くとサンダルを噛み始め

しゃがむと足に手をかけて

拳を口に寄せるとくわえてきて

徐々に興奮してきたので

散歩に連れて行くとはしゃぎすぎて

離すとどこかに行きそうなので

隣の子犬をかわいがっていると

そばで寂しそうにおすわりしていて

ドックフードを自分では食べようとはせず

僕の手であげると嬉しそうに食べ始め

無くなったら腕に噛み付きじゃれだして

飽きたらお尻を寄せつけあまえだして

歩くと片足毎に跳びついて

離れると遠くでこっちばかりみていて

同じことの繰り返しの一日でも

全く飽きない雨の日に

僕はこの犬に

アグーニという名前をつけた

本当の名前は知らない…

 

このアグーニ先生の授業は一日続いた

そして僕はこの粟国島での一日が

三十六時間あったと解答用紙に記入した

テストが終わった僕は

「三十六時間の一日」がもっと欲しいと願った

☆ 

『島国からの贈物』

『一日三十六時間の島』

 

2005417日 沖縄県粟国島 ウーグの浜にて

 

一日は二十四時間?

 

そんなこと誰が決めた

 

動くことを忘れられるこの島には三十六時間ある

 

旅人を迎える器の入り口は小さいけれど

 

ゆっくりとした文化と時間がここにある

 

ゆっくりとした島人はちょっと照れ屋さんで

 

旅人と静かに会釈する

 

ひとりでいるこの島でひとりでないのだと思わせる

 

ゆっくりとした波の変化はおもしろく

 

まだまだここに居たいと思わせる

 

ここに居る理由などないのに

 

 

存在価値も目的も要らない

 

ささやかな音がほしい

 

心地好い風がほしい

 

三十六時間の一日がほしい

 

 

 

 

 

 

 

僕たちは 人 である

 

 

 

 

 

人が人として本当に必要なもの

 

 

 

 

 

それはいったいなのか?

 

 

 

 

 

答えは沖縄の魚たちが教えてくれた

 

 

 

 

 

次回更新 『人として』