注:この作品はアニメを元にした二次創作です。

 第45.5話 「セーラの想い (前編)」

セーラがラルフ・クルー氏の娘であったことが判明した夜、セーラはクリスフォード宅の豪華な寝室で眠りにつこうとしていたが、一連の驚天動地の展開から興奮したのか目が覚めてしまい、しばらく眠れそうに無かった。

セーラ「ああ、なんてことなの・・・まさかあの叔父さまが、憎きお父様の親友だったなんて・・・思い起こせばお父様が亡くなったことを知った日から、私はずっとお父様の親友はお父様を騙して見捨てた敵だと思って生きてきた・・・だけどそれは私の思い違いだったなんて・・・お父様の親友だった叔父さまは、本当はとても誠実で優しい方だった・・・だって私のことをフランスで一生懸命に探してくれていたのだもの・・・それなのに私はいつかお父様の敵と刺し違える覚悟で学院の酷い仕打ちにも歯を食いしばって生きてきたなんて・・・私はなんて罪深いのだろう・・・ピーターが協力してくれたインド警察への手紙も、本当の目的はお父様の敵の居場所を知る手かがりの為だったなんて、叔父さまはもちろん、誰にも知られてはいけない秘密にしなければならない・・・でもピーターやベッキーだけは私の気持ちを理解してくれるかも知れないけど・・・ふふ、二人は私のことをプリンセス様みたいに慈悲深いと言ってたけど、私の本当の正体はとんでもない悪女かも知れないわ、冷酷なミンチン先生や意地悪なラビニアよりもずっと・・・ああ、叔父さまのことをもっと知りたい・・・お父様との思い出のことも・・・私の一番の窮地に私の素性も知らずに魔法を掛けたように助けてくれたのも叔父さまだった・・・ああ、混乱する・・・これから私は何を目的に生きて行けば良いのかしら・・・そういえばベッキーは今頃どうしているだろう・・・私の代わりにまだ皿洗いをしているのだろうか・・・そうだわ!」

セーラはそう思い立つとベッドから下りて、サイドテーブルにあった呼び鈴を鳴らした。 直ぐさま使用人のラムダスが飛んで来てドアをノックをした。

セーラ「どうぞ」

ラムダス「お嬢様、何か御用でしょうか?」

セーラ「夜分遅くすみません。 ちょっとお願いがあるんです」

ラムダス「何でしょうか?」

セーラ「実はベッキーのことなんです」

ラムダス「ああ、お嬢様と一緒に働いていた隣の下働きの方ですね」

セーラ「はい、ベッキーは私の命の恩人なんです。 あの辛い日々、もしベッキーがいなかったら私はとっくの昔に心が折れて死んでいたかも知れませんもの・・・」

ラムダス「ベッキーさんは、お嬢様がそこまで感謝される大切なお方なのですね?」

セーラ「ええ、そのベッキーなんですけど、私が突然学院から居なくなって悲しんでいると思うの。  そこで前にラムダスさんがしてくれたように温かい食事を彼女の部屋に届けて欲しいんです。 私は貴女の事を決して忘れていないってことを・・・」

ラムダス「なるほど! さすがお嬢様、名案です! 早速、旦那様の承諾を得て準備いたします!」

セーラ「出来るだけ早くお願いします。 私も直ぐに手紙を書きますから・・・」

ラムダス「承知いたしました!」

15分後、ラムダスはインド人の使用人二人を連れて、屋根づたいにベッキーの屋根裏部屋へ食事と薪、それとセーラから頼まれた手紙を運び、急いで準備をした。
更に10分後、ベッキーが仕事を終えて屋根裏部屋へ帰ってきた。 ベッキーはセーラが自分の事を忘れずに気遣ってくれていることにも大感激していた様子だった。 ラムダスは暫くその場に留まった。 そしてベッキーが食事を終える頃、ラムダスはセーラがベッキーの事を命の恩人だと思っていることを伝えた。するとベッキーは突然立ち上がった。

ベッキー「ラムダスさん、違います! わたしこそお嬢様が命の恩人なんでございます!」

ラムダス「分かりました、お座り下さい。 つまり、お互い命の恩人同士なんですね。 ところでベッキー様、つかぬ事を伺いますが、貴女は文字を読めますか?」

ベッキー「それが・・・簡単な文字だけなら・・・申し訳ございませんです!」

ラムダス「いえ、何も謝る必要はありませんよ。 では私がお嬢様の手紙を読んで差し上げますね」

ベッキー「ありがとうございます!」

ラムダスはセーラからの手紙を開き、その場で読み上げた。

「親愛なる戦友ベッキーへ

私が突然学院から居なくなり、貴女に私の分まで仕事が回ってしまった事を大変心苦しく思っています。
私は貴女に私の一番辛い時に親身になって助けてもらった事を一生忘れません。 
この食事は貴女への代わらぬ友情と、ささやかな感謝の印と思って下さい。
それと今は詳しくは言えませんが、近い日に貴女から戴いたご恩をお返ししたいと思っていますので、楽しみに待っていて下さいね!

元屋根裏の右の部屋にいた少女より」

ラムダスが手紙を読み終えてベッキーの方をみると、彼女は顔を両手で覆い号泣していた。

ベッキー「ううっ~、うっ、うっ、うっ、わたしみたいな者がしたことを一生忘れないっておしゃって下さるなんて・・・お嬢様~、もったいないでございます!! もったいないでございます!!」

これは本当のセーラは身分を隠したどこかの国のプリンセスだったんじゃないかと、ベッキーは信じていた故の言葉だった。
ラムダスはベッキーが落ち着いた頃、隣のクリスフォード宅へ戻ったのだった。

後編へ続く。
※4/12 大幅に加筆修正しました。