午後8時頃、真子と沙雪は碓氷峠に向かう為、シルエイティで国道18号線を走っていた。200m位先には池谷と真子が初めて出会った場所である峠の釜めし屋の看板が見えてきた。
 
沙雪 「(よし! 今のタイミングだわ・・)あっ! 真子! 悪い! ちょっとそこの峠の釜めし屋の駐車場に寄ってくれる?」
 
真子 「どうしたの?、沙雪」
 
沙雪 「それがさぁ、今、コンタクトレンズの片方をフロアマットに落としちゃってさぁ、一度車から降りて探したいのよ」
 
真子 「そう、分かった・・」
 
カチ・カチ・カチ・・・シルエイティはウインカーを出して峠の釜めし屋の駐車場へ入っていった。
 
カチャ、左のドアが開き、車から出る沙雪。手には懐中電灯を持っていた。 真子はシートに座ったまま、手を後ろに伸ばしてルームランプのスイッチを付けた。 沙雪はフロアマットを懐中電灯で照らしてコンタクトレンズを探し始めた。
 
沙雪 「えーと、どこいったかなー おかしいなー・・・(棒)」
 
真子 「まだ見つからないの?」
 
沙雪 「あっ、あったよ!! こんなところに・・・悪かったね、真子、余計な手間掛けさせちゃってさぁ・・・」
 
真子 「仕方ないよ。 もし、沙雪の目がよく見えなかったら、バトルの時、役立たずのバラストになっちゃうもの・・・」
 
沙雪 「あんたね~・・・相変わらず車に乗ってるときは、人が変わって毒舌になるんだから~」
 
真子 「ふふ・・・沙雪、早く車に乗って! 待ち合わせ時間まで、もう時間が無いよ!」
 
沙雪 「あっ!! あれは・・・」
 
わざとらしく大声で叫んで遠くを指さす沙雪。
 
真子 「どうしたの沙雪!! 大声なんか出して!!」
 
沙雪 「ハチロクよ!」
 
真子 「ハチロク? 別にハチロクなんか珍しくないでしょ・・・」
 
沙雪 「違うのよ! そんじょそこらのハチロクじゃなくて、あれは拓海君のハチロクだよ! だってパンダトレノだし、ドアに藤原豆腐店って書いてあるんだから・・・それにしても世の中、偶然てあるもんだね~(棒)」
 
真子 「ほんとに? でも、拓海君のハチロクのエンジン、最後のバトルで壊れちゃったはずじゃ・・」
 
カチャ、真子は沙雪の言葉が半信半疑ながら、ドアを開けて駐車場の端に止めてあったハチロクを肉眼で確かめようとした。
 
真子 「本当だ・・・沙雪の言う通り、あの車は拓海君のハチロクだよ。 エンジン積み替えたのかな?」
 
沙雪 「真子、あたし近くに行ってみるよ! 拓海君が乗っているかもしれないしね」
 
真子 「止めときなよ、沙雪! 拓海君の彼女が乗っているかもしれないよ!」
 
沙雪 「大丈夫だって!! そんときは挨拶すればいいんだから・・・」
 
真子 「そう・・・」
 
沙雪 「じゃっね~!! ラン・ラ・ラン・ラン♪」
 
沙雪は真子に手を振った後、スキップしながらハチロクの方へ向かっていった。
 
真子 「変な沙雪・・・」 
 
その頃、ハチロクの車内では・・・。
 
拓海 「池谷先輩!! 起きて下さいよ!!」
 
ハチロクの助手席に乗っていたのは池谷だった。 拓海は池谷の肩をゆすっていた。
 
池谷 「うーん、ムニャムニャ・・・なんだ、もう時間かよ! ふぁ~!!」
 
背伸びして両手を伸ばす池谷。
 
拓海 「それにしても沙雪さん、なんでこんな遠いところで待ち合わせするんだろう? しかも、池谷先輩も一緒に連れて来てって・・・いきなり過ぎじゃありませんか? オレにはわけが分からないすっよ!!」
 
池谷 「そうぼやくなよ、拓海・・・沙雪ちゃんとは、久しぶりに一緒にメシが食えるんだからさ。 お前の分はオレが奢るからよ。 まあ、オレ的には真子ちゃんの近況が気になるところでもあるけどな・・・」
 
沙雪は拓海に事前に電話をして、ここを待ち合わせ場所にして食事に誘っていたのである。 ちなみに拓海のハチロクはプロジェクトD時代の神奈川最終戦でエンジンブローし、しばらく廃車となっていたのだが、拓海の親父の文太がどこからかノーマルエンジンを探し出し積み替えて復活していたのだった。
 
拓海 「池谷先輩が問題無いのなら、オレは何も言うこと無いっすよ。 どうせオレ、今日の夜は暇だったし・・・」
 
コンコン! 池谷が乗っている側の窓を誰かが叩く音がした。
 
池谷 「!! 沙雪ちゃんか!」
 
カチャ、ドアを開けて急いで外に出る池谷。 カチャ、池谷に一寸遅れて外に出る拓海。
 
沙雪 「チース!! よぉ池谷、久しぶり!! 拓海君も久しぶり!! 二人共元気だった?」
 
池谷 「おぅ、久しぶり!! オレは元気、元気!!」
 
拓海 「こんばんは~・・・」
 
沙雪 「あっははは! 池谷も拓海君も変わらないね! 池谷は貧乏暇無しって感じだし、拓海君はボーとしてるしね」
 
池谷 「なんだよ~沙雪ちゃん、藪から棒に人を貧乏暇無しってさ~!! 当たってるけどな!!」
 
沙雪 「でしょう~!! あははは!!」
 
拓海 「・・・(相変わらず明るい人だな・・・)」
 
三人が団欒している様子をシルエイティの横で見ていた真子。 真子の方からは運転席側の拓海はよく見えたが、助手席側の池谷は車に隠れてよく見えなかった。
 
真子 「あっ、やっぱり拓海君! 車に乗ってたんだ!! あれ? 沙雪と話している人は・・・女性じゃなくて男性みたい・・・あの感じは・・・まさか・・・池谷さんなの!?」
 
ドキドキドキ・・・真子は自分でもはっきり分かるくらい、心臓の鼓動が早くなっていた。
 
池谷 「そういえば、沙雪ちゃん、ここまで自分の車で来たんだろ。 何て車?」
 
沙雪 「えっ、違うよ。 連れに送ってきてもらったんだ、あ・れ!」
 
沙雪は右を向いて、真子のいる方向を指さした。
 
池谷 「連れ? なんだ彼氏かよ・・・なに~!!」
 
池谷は振返って沙雪の指さす方向を見た。 そこには青いシルエイティと真子の姿が見えたのだった。
 
池谷 「ま、真子ちゃん・・・」
 
その場で硬直する池谷。
 
拓海 「青いシルエイティ・・・あの人は確か佐藤真子さんだ。 池谷先輩の憧れの人がどうしてここに・・・東京にいるんじゃなかったのか? 電話では沙雪さんだけ来るはずだったのに・・・」
 
真子 「やっぱり池谷さんだ・・・どうしよう・・・わたし心の準備がまだ出来てないよ・・・」
 
第4話へ続く。