小公女セーラ 第47話 「セーラの帰国(前編)」
花薫る5月のある日の朝、インドを訪れていたセーラがついに4か月ぶりにイギリスに戻ってきました。港にはミンチン院長やアメリア先生の他、学院の生徒達が総動員で出迎えに来ていました。 また、その中には、セーラの恩師デファルジュ先生やカーマイケル弁護士の奥様や子息のドナルド、姉ジャネットもいました。
桟橋に係留した船からまず現れたのは、クリスフォード氏の使用人ラムダスでした。 続いてクリスフォード氏とカーマイケル弁護士がにこやかに降りてきました。それからセーラが次女のベッキーと共に降りてきました。 出迎えの群衆に気が付いたセーラの目にはうっすらと涙が浮かんでました。
「お嬢様~!!!」
まずセーラに声を上げたのはピーターでした。 ひそかにセーラに好意を持っていた彼は嬉しくて仕方がないようでした。
「ピーター・・・」
「お嬢様、ピーターだけじゃありませんです。 ほら学院の皆様も!」
「セーラママ~!!!」
「セーラ、お帰りなさーい!!」
学院の生徒の中にはセーラが母親代わりをしていた泣き虫ロッティや親友アーメンガードの顔も見えました。 皆、手を振っています。 まもなくセーラが桟橋に降り立つと、まず抱きついてきたのがロッティでした。
「セーラママ、セーラママ~・・・会いたかったよ~!!」
「ロッティ、私もよ・・・」
まだ幼いロッティはセーラの足に抱きつぎながら泣きじゃくっていました。 すぐセーラはしゃがんでロッティの顔近くに自分の顔を寄せたのでした。
「ねえ、セーラママ・・・元気にしていた?」
「ええ、元気だったわ。ロッティは元気だった?」
「うん!! 元気にしていたよ!」
「そう、良かった・・・」
今は亡きセーラの父ラルフ・クルーが生前にセーラを「小さな奥様」と称していたのは、幼いながらセーラには母性本能があふれていたからでした。
次にセーラの前にミンチン院長とアメリア先生がセーラの前に来ました。
「院長先生、アメリア先生、ただいまインドより戻りました」
「セーラさん、お帰りなさい。 お待ちしておりましたわ。」
「長い船旅でお疲れのことでしょう。 おうちに帰られたらごゆっくりして下さいね」
「心遣いありがとうございます。」
セーラはお辞儀をすると、ある人物の視線に気が付きます。
「セーラ!!!」
「アーメンガード!!!」
親友アーメンガードです。 アーメンガードも目に大粒の涙を浮かべて泣いていました。 セーラも涙を流しながらアーメンガードの手を取りました。
「セーラ、会いたかった!!」
「私もよ、アーメンガード!!」
「あなたのいない学院なんて・・・私、寂して寂しくていつも寝るとき泣いていたのよ・・・」
「ごめんなさい、アーメンガード・・・」
「うん、いいのよセーラ・・・そ、そうだ、セーラ! イライザ叔母さんもここに来ているのよ!」
セーラが後ろを振り返ると、アーメンガードの叔母であるイライザがいました。
「セーラさん、お帰りなさい。 その様子だと私特製の船酔い薬は効いたみたいね」
「イライザ叔母様、お薬ありがとうございました。 私にはとっても効いたみたいで全然船酔いしませんでした。 でもベッキーには・・・」
「ベッキーがどうしたの?」
そこに現れたのは、青い顔をしたベッキーでした。
「なぜか私には全然効かなかったのでございます・・・お嬢様には効いて私には・・・なぜなんでしょうか? あ~気持ち悪い・・・」
「あらあら、ごめんなさいね。 おかしいわね、自慢の薬だったんだけどね。 もしかして体質の問題かしら・・・」
「いや、育ちが悪いせいじゃね?」
「!?」
「ピーター、そんなの関係ないでしょ!! 大体、あんたも人の事言えないでしょ!!」
ピーターのちゃかしには、さすがのベッキーも怒りました。
「ちげえねえ・・・冗談だよ、ベッキー!」
「もう、ピーターたら許さない!! 私だってたまには怒るんです!!」
「悪かったよ。 なぁ、許してくれよ、ベッキー・・・」
「許しません!! も~!!」
この夫婦漫才みたいなやりとりに周囲は笑いに包まれました。 二人はこの数年後に本当の夫婦になるとは知らずに・・・。
「セーラ君、お帰り・・・」
セーラの耳に懐かしい声が聞こえました。 忘れもしない恩師ディファルジュ先生です。 セーラはすぐ振り返りました。
「ディファルジュ先生!!・・・本当に先生ですか? 私、夢を見ているのかもしれない・・・」
「はっはは! 本物じゃよ! セーラ君」
「夢じゃないのね・・・でも先生、どうして私が今日港に着くことをご存知だったのですか?」
「セーラ君、元気そうで何よりだ。 君がインドから帰ってくるという連絡をアメリア先生からいただいてね。 名実共にダイヤモンド・プリンセスとなった君に無性に会いたくなったのさ・・・」
「ディファルジュ先生・・・私もずっと先生にお会いしたかったんです・・・私、先生が帰国されてからは、くじけそうになったときにはいつも先生のお言葉を思い出して、頑張ることが出来たんです。いつかそのお礼を言いたくて・・・」
「そうか・・・でもお礼なんかいいんじゃよ。 君の努力する勇気が辛いことに勝ったんじゃから・・・しかし驚いたよ、君がダイヤモンド鉱山を経営している億万長者に引き取られたという話を聞いたときは・・・これもどんなに辛いときも一生懸命に頑張ってきた君へ、神様からのご褒美じゃな・・・」
セーラがディファルジュ先生と感動の対面をしている場所へ、クリスフォード氏が杖をついてやって来ました。
「そうですな! 私も同感です、ディファルジュ先生」
「あなたは? 」
「はじめまして、私はセーラの保護者のクリスフォードと申します。 先生のことはセーラより詳しく聞いております」
「そうですか、あなたが・・・これからもセーラ君のことをよろしくお願いします」
「はい。 私の命に代えてこの子を守ってゆくつもりです。 そうだ、先生のご都合がよろしければ、ぜひ我が家に寄ってください。 セーラとの思い出話をお聞かせていただけないでしょうか!」
「そうしたいのはやまやまじゃが、ヤボ用がありましてな。 これからすぐ汽車に乗らないといけないのじゃ・・・」
「そうですか、残念です。 それでは今後近くに来られることがありましたら、いつでも我が家にお寄りください。 セーラも喜びます」
「わかりました。 いつか必ず寄らせてもらいますよ。 それでは・・・」
「セーラ君」
「はい、ディファルジュ先生」
「良き保護者を得ましたね。 クリスフォードさんを一生大切にするんじゃよ」
「はい!!」
「それではまた。 いつかまた逢う日もあるじゃろ・・・さようなら」
「さようなら~!!」
セーラは恩師との思わぬ再会に胸がいっぱいになりました。 でも、教え子へ会いに来る為だけにわざわざ遠いフランスから足を運ぶでしょうか? その答えは次回明らかになります。
「皆さ~ん!!」
例のミンチン院長の気持ちの悪い猫撫で声(笑)が辺りに響きました。
「セーラさんはもとより、クリスフォードさまの皆様もお疲れのご様子ですから、セーラさんとのお話はこれくらいにして学院に戻りますよ。 アメリア、馬車を準備して頂戴!」
「はい、わかりましたわ、お姉さま」
アメリア先生は馬車乗り場へ歩いて行きました。そんな中、ロッティが再びセーラにとことこと近づいてきました。
「ロッティ! どうしたの?」
「ねえ、セーラママ・・・この後にセーラママの帰国パーティがあるのよ、知っていた?」
「知っていたわ。帰国する前に院長先生から手紙をもらったのよ」
「なんだ~知っていたんだ~・・・セーラママをびっくりさせようと思っていたのに・・・」
「ごめんなさい、ロッティ・・・」
「まあいいや・・・あのね、あたしね、朝早く起きてセーラママの為に一生懸命飾りつけしたのよ!」
「それは楽しみね。 ありがとう、ロッティ!」
「ど、どういたしまして・・・」
「まあ・・・ロッティももう立派なエミリーのお姉さんね。」
「うん、あたし練習したもん!」
たどたどしいお嬢様言葉でロッティはセーラへ返事を返すのでした。 しばらくしてアメリア先生が戻ってきて、ミンチン院長へ馬車の準備が出来たことを報告しました。
「それでは皆さん、学院へ戻りますよ!」
「は~い!!」
ミンチン院長がクリスフォード氏に別れの挨拶をしている頃、ピーターが走ってセーラの前へやって来ました。
「お嬢様~!! 馬車の用意が出来ました。こちらへどうぞ!」
間もなくセーラとクリスフォード氏一行は、馬車乗り場へ向かったのでした。
つづく。
花薫る5月のある日の朝、インドを訪れていたセーラがついに4か月ぶりにイギリスに戻ってきました。港にはミンチン院長やアメリア先生の他、学院の生徒達が総動員で出迎えに来ていました。 また、その中には、セーラの恩師デファルジュ先生やカーマイケル弁護士の奥様や子息のドナルド、姉ジャネットもいました。
桟橋に係留した船からまず現れたのは、クリスフォード氏の使用人ラムダスでした。 続いてクリスフォード氏とカーマイケル弁護士がにこやかに降りてきました。それからセーラが次女のベッキーと共に降りてきました。 出迎えの群衆に気が付いたセーラの目にはうっすらと涙が浮かんでました。
「お嬢様~!!!」
まずセーラに声を上げたのはピーターでした。 ひそかにセーラに好意を持っていた彼は嬉しくて仕方がないようでした。
「ピーター・・・」
「お嬢様、ピーターだけじゃありませんです。 ほら学院の皆様も!」
「セーラママ~!!!」
「セーラ、お帰りなさーい!!」
学院の生徒の中にはセーラが母親代わりをしていた泣き虫ロッティや親友アーメンガードの顔も見えました。 皆、手を振っています。 まもなくセーラが桟橋に降り立つと、まず抱きついてきたのがロッティでした。
「セーラママ、セーラママ~・・・会いたかったよ~!!」
「ロッティ、私もよ・・・」
まだ幼いロッティはセーラの足に抱きつぎながら泣きじゃくっていました。 すぐセーラはしゃがんでロッティの顔近くに自分の顔を寄せたのでした。
「ねえ、セーラママ・・・元気にしていた?」
「ええ、元気だったわ。ロッティは元気だった?」
「うん!! 元気にしていたよ!」
「そう、良かった・・・」
今は亡きセーラの父ラルフ・クルーが生前にセーラを「小さな奥様」と称していたのは、幼いながらセーラには母性本能があふれていたからでした。
次にセーラの前にミンチン院長とアメリア先生がセーラの前に来ました。
「院長先生、アメリア先生、ただいまインドより戻りました」
「セーラさん、お帰りなさい。 お待ちしておりましたわ。」
「長い船旅でお疲れのことでしょう。 おうちに帰られたらごゆっくりして下さいね」
「心遣いありがとうございます。」
セーラはお辞儀をすると、ある人物の視線に気が付きます。
「セーラ!!!」
「アーメンガード!!!」
親友アーメンガードです。 アーメンガードも目に大粒の涙を浮かべて泣いていました。 セーラも涙を流しながらアーメンガードの手を取りました。
「セーラ、会いたかった!!」
「私もよ、アーメンガード!!」
「あなたのいない学院なんて・・・私、寂して寂しくていつも寝るとき泣いていたのよ・・・」
「ごめんなさい、アーメンガード・・・」
「うん、いいのよセーラ・・・そ、そうだ、セーラ! イライザ叔母さんもここに来ているのよ!」
セーラが後ろを振り返ると、アーメンガードの叔母であるイライザがいました。
「セーラさん、お帰りなさい。 その様子だと私特製の船酔い薬は効いたみたいね」
「イライザ叔母様、お薬ありがとうございました。 私にはとっても効いたみたいで全然船酔いしませんでした。 でもベッキーには・・・」
「ベッキーがどうしたの?」
そこに現れたのは、青い顔をしたベッキーでした。
「なぜか私には全然効かなかったのでございます・・・お嬢様には効いて私には・・・なぜなんでしょうか? あ~気持ち悪い・・・」
「あらあら、ごめんなさいね。 おかしいわね、自慢の薬だったんだけどね。 もしかして体質の問題かしら・・・」
「いや、育ちが悪いせいじゃね?」
「!?」
「ピーター、そんなの関係ないでしょ!! 大体、あんたも人の事言えないでしょ!!」
ピーターのちゃかしには、さすがのベッキーも怒りました。
「ちげえねえ・・・冗談だよ、ベッキー!」
「もう、ピーターたら許さない!! 私だってたまには怒るんです!!」
「悪かったよ。 なぁ、許してくれよ、ベッキー・・・」
「許しません!! も~!!」
この夫婦漫才みたいなやりとりに周囲は笑いに包まれました。 二人はこの数年後に本当の夫婦になるとは知らずに・・・。
「セーラ君、お帰り・・・」
セーラの耳に懐かしい声が聞こえました。 忘れもしない恩師ディファルジュ先生です。 セーラはすぐ振り返りました。
「ディファルジュ先生!!・・・本当に先生ですか? 私、夢を見ているのかもしれない・・・」
「はっはは! 本物じゃよ! セーラ君」
「夢じゃないのね・・・でも先生、どうして私が今日港に着くことをご存知だったのですか?」
「セーラ君、元気そうで何よりだ。 君がインドから帰ってくるという連絡をアメリア先生からいただいてね。 名実共にダイヤモンド・プリンセスとなった君に無性に会いたくなったのさ・・・」
「ディファルジュ先生・・・私もずっと先生にお会いしたかったんです・・・私、先生が帰国されてからは、くじけそうになったときにはいつも先生のお言葉を思い出して、頑張ることが出来たんです。いつかそのお礼を言いたくて・・・」
「そうか・・・でもお礼なんかいいんじゃよ。 君の努力する勇気が辛いことに勝ったんじゃから・・・しかし驚いたよ、君がダイヤモンド鉱山を経営している億万長者に引き取られたという話を聞いたときは・・・これもどんなに辛いときも一生懸命に頑張ってきた君へ、神様からのご褒美じゃな・・・」
セーラがディファルジュ先生と感動の対面をしている場所へ、クリスフォード氏が杖をついてやって来ました。
「そうですな! 私も同感です、ディファルジュ先生」
「あなたは? 」
「はじめまして、私はセーラの保護者のクリスフォードと申します。 先生のことはセーラより詳しく聞いております」
「そうですか、あなたが・・・これからもセーラ君のことをよろしくお願いします」
「はい。 私の命に代えてこの子を守ってゆくつもりです。 そうだ、先生のご都合がよろしければ、ぜひ我が家に寄ってください。 セーラとの思い出話をお聞かせていただけないでしょうか!」
「そうしたいのはやまやまじゃが、ヤボ用がありましてな。 これからすぐ汽車に乗らないといけないのじゃ・・・」
「そうですか、残念です。 それでは今後近くに来られることがありましたら、いつでも我が家にお寄りください。 セーラも喜びます」
「わかりました。 いつか必ず寄らせてもらいますよ。 それでは・・・」
「セーラ君」
「はい、ディファルジュ先生」
「良き保護者を得ましたね。 クリスフォードさんを一生大切にするんじゃよ」
「はい!!」
「それではまた。 いつかまた逢う日もあるじゃろ・・・さようなら」
「さようなら~!!」
セーラは恩師との思わぬ再会に胸がいっぱいになりました。 でも、教え子へ会いに来る為だけにわざわざ遠いフランスから足を運ぶでしょうか? その答えは次回明らかになります。
「皆さ~ん!!」
例のミンチン院長の気持ちの悪い猫撫で声(笑)が辺りに響きました。
「セーラさんはもとより、クリスフォードさまの皆様もお疲れのご様子ですから、セーラさんとのお話はこれくらいにして学院に戻りますよ。 アメリア、馬車を準備して頂戴!」
「はい、わかりましたわ、お姉さま」
アメリア先生は馬車乗り場へ歩いて行きました。そんな中、ロッティが再びセーラにとことこと近づいてきました。
「ロッティ! どうしたの?」
「ねえ、セーラママ・・・この後にセーラママの帰国パーティがあるのよ、知っていた?」
「知っていたわ。帰国する前に院長先生から手紙をもらったのよ」
「なんだ~知っていたんだ~・・・セーラママをびっくりさせようと思っていたのに・・・」
「ごめんなさい、ロッティ・・・」
「まあいいや・・・あのね、あたしね、朝早く起きてセーラママの為に一生懸命飾りつけしたのよ!」
「それは楽しみね。 ありがとう、ロッティ!」
「ど、どういたしまして・・・」
「まあ・・・ロッティももう立派なエミリーのお姉さんね。」
「うん、あたし練習したもん!」
たどたどしいお嬢様言葉でロッティはセーラへ返事を返すのでした。 しばらくしてアメリア先生が戻ってきて、ミンチン院長へ馬車の準備が出来たことを報告しました。
「それでは皆さん、学院へ戻りますよ!」
「は~い!!」
ミンチン院長がクリスフォード氏に別れの挨拶をしている頃、ピーターが走ってセーラの前へやって来ました。
「お嬢様~!! 馬車の用意が出来ました。こちらへどうぞ!」
間もなくセーラとクリスフォード氏一行は、馬車乗り場へ向かったのでした。
つづく。