【プロローグ】
200X年4月X日土曜日 碓氷峠 夜10時
一台の青いシルエイティが、C-121と呼ばれるこの峠で最も難しいコーナーを誰よりも速く駆け抜けていった。
ギャギャギャギャ・・・ガァアアアアア・・・
腕自慢の走り屋達が集まるこの碓氷峠に、地元では「インパクトブルー」と呼ばれる伝説の走り屋が2年ぶりに帰ってきたのだ。
ギャラリー A 「あれ!? あの車は確か・・」
ギャラリー B 「うぉ、すげぇドリフト!! なんじゃ、あの車!! 他のやつらとはスピードレンジが全然違う!! ぶったまげたぜ~!!」
ギャラリー A 「おいおい、おまえはあの車を知らないのか? あの青いシルエイティはな、碓氷最速のインパクトブルーって言ってさ、ここを走る走り屋の間では誰もが知っている伝説の走り屋なんだぜ。 しかも女の走り屋ときた。 まあ、ここ最近じゃ、とんとその姿を見掛けなかったけどな・・・俺も最後に見たのは、2年前ぐらいだったかな・・・」
ギャラリー B 「ふーん、女の走り屋ねぇ・・・そんな有名な走り屋だったのか・・・俺がここを走り始めたの1年前ぐらいだったもんな、知らねえはずだよ。 それにしても、とんでもないスピードだったな。 誰もあの車には勝てねえんじゃないのか?」
ギャラリー A 「まあな、地元ではあの車に勝てた奴は、とうとう誰もいなかったな。 でも3年ぐらい前に秋名のハチロクという奴に負けたって、噂じゃ聞いたけどな・・」
ギャラリー B 「秋名のハチロク? ああ、その名前なら俺も知っているよ。 そいつさ、藤原拓海っていう奴だろ? 昔あの有名な高橋涼介が作った「プロジェクト D」つう凄いチームにいてさ、関東の速い走り屋達とバトルをしまくってたらしいけど、結局、負け無しだったらしいぜ。 プロのレーシングドライバーにも勝ったっていう噂も聞いたな。 そいつさ、今じゃラリーやってるらしくて、この間もどっかの国内大会で優勝したって記事をレース雑誌で読んだな・・」
ギャラリー A 「ああ、そのプロジェクトDなら俺も憶えてるよ。 当時は碓氷の走り屋の間でも凄い盛り上がってたもんな。 ラリー? 秋名のハチロクも峠を卒業して、今じゃプロのラリーストになったのか・・・やっぱ才能がある奴は違うよな・・(それにしても、なぜ今頃になってインパクトブルーがこの峠に現れたんだろ?)」
ブロロロ・・・チカ、チカ、チカ・・・キュッ カチャ、バタン! カチャ、バタン!
青いシルエイティは碓氷峠を往復した後、道路脇にあったジュースの自動販売機の前に車を止めた。 中から2人の女の子が下りてきた。
沙雪 「真子、あったかいコーヒーでいいかい?」
真子 「ええ・・」
ガチャン 二人分の缶コーヒーを買う沙雪。
沙雪 「ほら、真子!」
自動販売機で買った缶コーヒーを真子に渡す沙雪。
真子 「ありがとう、沙雪。 お金は?」
真子は車の後席から財布の入ったカバンを取り出そうと、後ろを振り向こうとした。
沙雪 「いいよ、いいよ、真子! 今日はあたしの奢り! 久しぶりにあんたの走りも見られたしさ・・これはインパクトブルー復活の前祝いさ! 缶コーヒーじゃ、ちょっとしょぼいけどね。 あはは・・」
真子 「そんなことないよ、沙雪・・」
沙雪 「ところで、真子。 久しぶりにここを思いっきり責めてみて自信は取り戻せたかい?」
真子 「うん。 やっぱり、わたしの原点はここなんだなって、走りながら思ったよ・・」
沙雪 「何事も迷ったら、原点に戻れって言うしね。 それに今日の走りは、昔の最高の走りと比べても上出来だったよ。 危うさも無かったし、さすが普段からレースに出ているだけあるね。 時間があったら、またいつでもここに走りに戻ってきなよ!」
真子 「そうだね、わかったよ・・(口は笑っていたが、目は寂しさを隠せない真子だった)」
二人はしばらく他愛もない話をして、缶コーヒーを飲み終えた。
沙雪 「さてと、もう一本行くか、真子!!」
真子 「うん。 今日はありがとね、沙雪。 彼氏とのデートもキャンセルしてもらって私に付き合ってくれて・・」
沙雪 「いいんだって! 実は知り合いから聞いたんだけどさぁ、あいつ、「沙雪は俺にベタ惚れだぜ!!」とか吹いてるらしくてさぁ、なんか調子に乗ってるみたいだから少しぐらい冷たくしてやった方がいいんだよね~!」
真子 「そうなの?(でもいつものおのろけ話は何?) でもふふ、なんかそうゆうところ、沙雪らしくて安心したよ・・」
沙雪 「なにそれ!? ・・まぁ、いいわ。 あたしのことなんかよりもさぁ、あんたの方はどうなの?」
真子 「えっ!? どうって?」
沙雪 「決まってるでしょ、彼氏よ、か・れ・し!! 真子のことだから、東京でちゃっかりいい男捕まえたんじゃないの?」
真子 「そ、そんな人いないよ! 沙雪じゃないんだから・・」
沙雪 「ほっときなさいよ! ふーん、まだ男がいない・・分かった! あんた、まだ忘れられないんでしょ、池谷のこと・・」
真子 「!! ・・うん」
一瞬驚いた顔をした後、すぐに顔を真っ赤にしてうつむく真子。
沙雪 「そういうとこ、真子はいつまで経っても純情よね~。 でもさぁ~、池谷なんてどこがいいのさ? あんな垢ぬけない男・・走りもダッサイしさぁ・・」
真子 「池谷さんのことを悪く言わないでよ、沙雪!!」
沙雪 「わっ、びっくりした~!! 突然大声だすんだもん…悪かったよ、真子。 つい池谷を悪く言っちゃてさ。 でもさぁ、あんた昔は走り屋は顔よりもウデって、よくあたしに言ってたよね。 心境の変化って奴?(池谷は顔も今一だけどね)」
真子 「大声出してごめんなさい・・沙雪、それは今でも変わらないの。 思うんだけど本物の走り屋の人って、普段は安全運転で流れを乱さない人だと思うの。 私ね、池谷さんの横に乗ったことあるんだけど、一般道で飛ばすことは絶対しなかったよ。 だから、私は池谷さんって本当は運転がすごく上手い人だと思っているの・・」
沙雪 「ふーん(やけに池谷のこと良い方に評価してるわね)・・まあね、あたしも街中でぶっ飛ばすヤツが一番ヘタクソだと思うけどね。 でもさぁ、真子が池谷に惚れたのはそれだけじゃないんでしょ?」
真子 「うん・・沙雪も知っていると思うけど、わたしメカに関してはとことんダメじゃない・・」
沙雪 「ああ、それはもうイヤというほど知りつくしているけどね・・それが?」
真子 「池谷さんって、すごくメカに詳しいの・・」
沙雪 「ははーん、実は真子は池谷のそこだけに惚れたんじゃないのー? 他に何の取り柄も無さそうだしね!」
真子 「そんなことないよ!! 池谷さんって、それだけじゃなくて誰にでもすごく優しいんだよ! 最後に会った時だって、バスに置いていかれて困っていたおじいちゃんを北軽井沢まで送ってあげたって言ってたし…。 走り屋でそんな優しい人、めったにいないよ!」
沙雪 「ゴメン、ゴメン! あたしだって、池谷が優しくて気の良い奴だってことは認めてるよ。 それにしても真子ってさぁ、ほんと池谷にベタ惚れなんだね・・池谷をけなすと、すぐムキになって反論するんだから・・」
真子 「えっ!? そこまで惚れてないよ~!! (わ~バレてる~)」
沙雪 「…(ふふ、わかりやすい子だね~真っ赤になっちゃって) あっ、そうだ!! むふふふ・・」
真子 「なになに!?」
沙雪 「いいこと思いついちゃったけど、真子には内緒!!」
真子 「ずる~い!!」
沙雪 「そんなことより、あんたレースの方はどうなのよ! 去年みたいな残念な成績じゃ、碓氷最速と言われたインパクトブルーの名前が泣くよ!!」
真子 「だってわたし・・FF車が苦手で・・それに周りはみんな速い人ばかりだし・・」
沙雪 「喝(かーつっ)!! だってわたし女の子なんだもん・・じゃないよ!! あんたは相原こずえか!」
突然、大声を出す沙雪。
真子 「きゃっ!! もお、びっくりした!! 沙雪、突然そんな大きな声、出さないでよ~(ってか、相原こずえって誰?)」
沙雪 「あんたね~、男を捨てて上京して、出版社のお金でレースやってんでしょ!! しかも2年目よ。 FF車が苦手なんて言い訳しないで、もっと真剣にやりなさいよ!!」
真子 「男を捨てて・・というところは納得いかないけど、沙雪に言われなくても、わたしは真剣にやってるよ!! でもね、レースになると、どうしてもアンダー出しちゃってインから刺されて抜かれるか、立ち上がり加速で抜かれるかの繰り返しになっちゃって・・わたし、FF車の乗り方を間違っているのかも知れない・・」
沙雪 「アンダーか・・FF車はFR車と違って重量配分が前よりだからね。 FR車よりハンドリングが難しいのは認めるよ。 それに前から真子は突っ込み重視の走りだったからね。 そういう走りは、前輪に過重が掛り過ぎて余計にアンダー出してしまうのよ。 真子にアンダーを消すテクがあればいいんだけど・・
よし、そんなにFF車の乗り方知りたいんだったら、あたしに任せな!! FF車に乗ったら天下一品のヤツを紹介してやるからさ!! 妙義の下りの詐欺師!!もとい、妙義の下りの魔術師!!と言われているそいつから、FF車の走りのテクを盗むんだよ、真子!!」
真子 「ありがとう、沙雪。 でも、その人ってまさか・・」
沙雪 「あん? そういえばあんたも知ってるよね。 ナイトキッズの庄司慎吾、あたしの幼なじみの・・」
真子 「やっぱり・・(でも私、あの人苦手・・)」
その頃、母親と一緒に自宅でテレビを見ていた池谷先輩。
池谷 「ハックシュっ!! クソっ、だれかが俺の噂でもしてやがるのかよ!!」
池谷母 「・・誰がおまえの噂なんか、するもんかい!」
池谷 「なんだよ、かあちゃん、冷めてーな!! 俺だって噂ぐらいされるさ!!」
池谷母 「早く結婚して、かあちゃんに孫を抱かせてくれなよ!! せっかくのお見合いの話、断ってばっかりいてさ!!」
池谷 「おれはまだ若いんだ!! 自分の嫁ぐらい、自分で探すよ!!」
池谷母 「ふん、どうだか・・」
池谷 「クソっ・・(かあちゃんには大見え切ったけど・・ホントは真子ちゃんがまだ忘れられないんだよな~。 でも、真子ちゃんは今、東京で独りで頑張っているんだ。 オレみたいのがしゃしゃり出ても、レースの邪魔になるだけだしな~)」
相変わらず優柔不断で自分に自信の無い池谷だった。
200X年4月X日土曜日 碓氷峠 夜10時
一台の青いシルエイティが、C-121と呼ばれるこの峠で最も難しいコーナーを誰よりも速く駆け抜けていった。
ギャギャギャギャ・・・ガァアアアアア・・・
腕自慢の走り屋達が集まるこの碓氷峠に、地元では「インパクトブルー」と呼ばれる伝説の走り屋が2年ぶりに帰ってきたのだ。
ギャラリー A 「あれ!? あの車は確か・・」
ギャラリー B 「うぉ、すげぇドリフト!! なんじゃ、あの車!! 他のやつらとはスピードレンジが全然違う!! ぶったまげたぜ~!!」
ギャラリー A 「おいおい、おまえはあの車を知らないのか? あの青いシルエイティはな、碓氷最速のインパクトブルーって言ってさ、ここを走る走り屋の間では誰もが知っている伝説の走り屋なんだぜ。 しかも女の走り屋ときた。 まあ、ここ最近じゃ、とんとその姿を見掛けなかったけどな・・・俺も最後に見たのは、2年前ぐらいだったかな・・・」
ギャラリー B 「ふーん、女の走り屋ねぇ・・・そんな有名な走り屋だったのか・・・俺がここを走り始めたの1年前ぐらいだったもんな、知らねえはずだよ。 それにしても、とんでもないスピードだったな。 誰もあの車には勝てねえんじゃないのか?」
ギャラリー A 「まあな、地元ではあの車に勝てた奴は、とうとう誰もいなかったな。 でも3年ぐらい前に秋名のハチロクという奴に負けたって、噂じゃ聞いたけどな・・」
ギャラリー B 「秋名のハチロク? ああ、その名前なら俺も知っているよ。 そいつさ、藤原拓海っていう奴だろ? 昔あの有名な高橋涼介が作った「プロジェクト D」つう凄いチームにいてさ、関東の速い走り屋達とバトルをしまくってたらしいけど、結局、負け無しだったらしいぜ。 プロのレーシングドライバーにも勝ったっていう噂も聞いたな。 そいつさ、今じゃラリーやってるらしくて、この間もどっかの国内大会で優勝したって記事をレース雑誌で読んだな・・」
ギャラリー A 「ああ、そのプロジェクトDなら俺も憶えてるよ。 当時は碓氷の走り屋の間でも凄い盛り上がってたもんな。 ラリー? 秋名のハチロクも峠を卒業して、今じゃプロのラリーストになったのか・・・やっぱ才能がある奴は違うよな・・(それにしても、なぜ今頃になってインパクトブルーがこの峠に現れたんだろ?)」
ブロロロ・・・チカ、チカ、チカ・・・キュッ カチャ、バタン! カチャ、バタン!
青いシルエイティは碓氷峠を往復した後、道路脇にあったジュースの自動販売機の前に車を止めた。 中から2人の女の子が下りてきた。
沙雪 「真子、あったかいコーヒーでいいかい?」
真子 「ええ・・」
ガチャン 二人分の缶コーヒーを買う沙雪。
沙雪 「ほら、真子!」
自動販売機で買った缶コーヒーを真子に渡す沙雪。
真子 「ありがとう、沙雪。 お金は?」
真子は車の後席から財布の入ったカバンを取り出そうと、後ろを振り向こうとした。
沙雪 「いいよ、いいよ、真子! 今日はあたしの奢り! 久しぶりにあんたの走りも見られたしさ・・これはインパクトブルー復活の前祝いさ! 缶コーヒーじゃ、ちょっとしょぼいけどね。 あはは・・」
真子 「そんなことないよ、沙雪・・」
沙雪 「ところで、真子。 久しぶりにここを思いっきり責めてみて自信は取り戻せたかい?」
真子 「うん。 やっぱり、わたしの原点はここなんだなって、走りながら思ったよ・・」
沙雪 「何事も迷ったら、原点に戻れって言うしね。 それに今日の走りは、昔の最高の走りと比べても上出来だったよ。 危うさも無かったし、さすが普段からレースに出ているだけあるね。 時間があったら、またいつでもここに走りに戻ってきなよ!」
真子 「そうだね、わかったよ・・(口は笑っていたが、目は寂しさを隠せない真子だった)」
二人はしばらく他愛もない話をして、缶コーヒーを飲み終えた。
沙雪 「さてと、もう一本行くか、真子!!」
真子 「うん。 今日はありがとね、沙雪。 彼氏とのデートもキャンセルしてもらって私に付き合ってくれて・・」
沙雪 「いいんだって! 実は知り合いから聞いたんだけどさぁ、あいつ、「沙雪は俺にベタ惚れだぜ!!」とか吹いてるらしくてさぁ、なんか調子に乗ってるみたいだから少しぐらい冷たくしてやった方がいいんだよね~!」
真子 「そうなの?(でもいつものおのろけ話は何?) でもふふ、なんかそうゆうところ、沙雪らしくて安心したよ・・」
沙雪 「なにそれ!? ・・まぁ、いいわ。 あたしのことなんかよりもさぁ、あんたの方はどうなの?」
真子 「えっ!? どうって?」
沙雪 「決まってるでしょ、彼氏よ、か・れ・し!! 真子のことだから、東京でちゃっかりいい男捕まえたんじゃないの?」
真子 「そ、そんな人いないよ! 沙雪じゃないんだから・・」
沙雪 「ほっときなさいよ! ふーん、まだ男がいない・・分かった! あんた、まだ忘れられないんでしょ、池谷のこと・・」
真子 「!! ・・うん」
一瞬驚いた顔をした後、すぐに顔を真っ赤にしてうつむく真子。
沙雪 「そういうとこ、真子はいつまで経っても純情よね~。 でもさぁ~、池谷なんてどこがいいのさ? あんな垢ぬけない男・・走りもダッサイしさぁ・・」
真子 「池谷さんのことを悪く言わないでよ、沙雪!!」
沙雪 「わっ、びっくりした~!! 突然大声だすんだもん…悪かったよ、真子。 つい池谷を悪く言っちゃてさ。 でもさぁ、あんた昔は走り屋は顔よりもウデって、よくあたしに言ってたよね。 心境の変化って奴?(池谷は顔も今一だけどね)」
真子 「大声出してごめんなさい・・沙雪、それは今でも変わらないの。 思うんだけど本物の走り屋の人って、普段は安全運転で流れを乱さない人だと思うの。 私ね、池谷さんの横に乗ったことあるんだけど、一般道で飛ばすことは絶対しなかったよ。 だから、私は池谷さんって本当は運転がすごく上手い人だと思っているの・・」
沙雪 「ふーん(やけに池谷のこと良い方に評価してるわね)・・まあね、あたしも街中でぶっ飛ばすヤツが一番ヘタクソだと思うけどね。 でもさぁ、真子が池谷に惚れたのはそれだけじゃないんでしょ?」
真子 「うん・・沙雪も知っていると思うけど、わたしメカに関してはとことんダメじゃない・・」
沙雪 「ああ、それはもうイヤというほど知りつくしているけどね・・それが?」
真子 「池谷さんって、すごくメカに詳しいの・・」
沙雪 「ははーん、実は真子は池谷のそこだけに惚れたんじゃないのー? 他に何の取り柄も無さそうだしね!」
真子 「そんなことないよ!! 池谷さんって、それだけじゃなくて誰にでもすごく優しいんだよ! 最後に会った時だって、バスに置いていかれて困っていたおじいちゃんを北軽井沢まで送ってあげたって言ってたし…。 走り屋でそんな優しい人、めったにいないよ!」
沙雪 「ゴメン、ゴメン! あたしだって、池谷が優しくて気の良い奴だってことは認めてるよ。 それにしても真子ってさぁ、ほんと池谷にベタ惚れなんだね・・池谷をけなすと、すぐムキになって反論するんだから・・」
真子 「えっ!? そこまで惚れてないよ~!! (わ~バレてる~)」
沙雪 「…(ふふ、わかりやすい子だね~真っ赤になっちゃって) あっ、そうだ!! むふふふ・・」
真子 「なになに!?」
沙雪 「いいこと思いついちゃったけど、真子には内緒!!」
真子 「ずる~い!!」
沙雪 「そんなことより、あんたレースの方はどうなのよ! 去年みたいな残念な成績じゃ、碓氷最速と言われたインパクトブルーの名前が泣くよ!!」
真子 「だってわたし・・FF車が苦手で・・それに周りはみんな速い人ばかりだし・・」
沙雪 「喝(かーつっ)!! だってわたし女の子なんだもん・・じゃないよ!! あんたは相原こずえか!」
突然、大声を出す沙雪。
真子 「きゃっ!! もお、びっくりした!! 沙雪、突然そんな大きな声、出さないでよ~(ってか、相原こずえって誰?)」
沙雪 「あんたね~、男を捨てて上京して、出版社のお金でレースやってんでしょ!! しかも2年目よ。 FF車が苦手なんて言い訳しないで、もっと真剣にやりなさいよ!!」
真子 「男を捨てて・・というところは納得いかないけど、沙雪に言われなくても、わたしは真剣にやってるよ!! でもね、レースになると、どうしてもアンダー出しちゃってインから刺されて抜かれるか、立ち上がり加速で抜かれるかの繰り返しになっちゃって・・わたし、FF車の乗り方を間違っているのかも知れない・・」
沙雪 「アンダーか・・FF車はFR車と違って重量配分が前よりだからね。 FR車よりハンドリングが難しいのは認めるよ。 それに前から真子は突っ込み重視の走りだったからね。 そういう走りは、前輪に過重が掛り過ぎて余計にアンダー出してしまうのよ。 真子にアンダーを消すテクがあればいいんだけど・・
よし、そんなにFF車の乗り方知りたいんだったら、あたしに任せな!! FF車に乗ったら天下一品のヤツを紹介してやるからさ!! 妙義の下りの詐欺師!!もとい、妙義の下りの魔術師!!と言われているそいつから、FF車の走りのテクを盗むんだよ、真子!!」
真子 「ありがとう、沙雪。 でも、その人ってまさか・・」
沙雪 「あん? そういえばあんたも知ってるよね。 ナイトキッズの庄司慎吾、あたしの幼なじみの・・」
真子 「やっぱり・・(でも私、あの人苦手・・)」
その頃、母親と一緒に自宅でテレビを見ていた池谷先輩。
池谷 「ハックシュっ!! クソっ、だれかが俺の噂でもしてやがるのかよ!!」
池谷母 「・・誰がおまえの噂なんか、するもんかい!」
池谷 「なんだよ、かあちゃん、冷めてーな!! 俺だって噂ぐらいされるさ!!」
池谷母 「早く結婚して、かあちゃんに孫を抱かせてくれなよ!! せっかくのお見合いの話、断ってばっかりいてさ!!」
池谷 「おれはまだ若いんだ!! 自分の嫁ぐらい、自分で探すよ!!」
池谷母 「ふん、どうだか・・」
池谷 「クソっ・・(かあちゃんには大見え切ったけど・・ホントは真子ちゃんがまだ忘れられないんだよな~。 でも、真子ちゃんは今、東京で独りで頑張っているんだ。 オレみたいのがしゃしゃり出ても、レースの邪魔になるだけだしな~)」
相変わらず優柔不断で自分に自信の無い池谷だった。
続く。