私は、最初の来客 に声をかけた。
「申し訳ないが、別の客が来てしまった。 今から行かなくてはいけないのだが、君はどうするかね? せっかく来てもらったお客様には失礼だが。 このままもう少しいても大丈夫だが、帰るときの出口は向こうの扉からおねがいするよ」
彼は何も言わなかった。
かたく口を閉ざし、何かを考えているようだった。
私は、彼に 「失礼します」 とつぶやき一礼した。
そして、側近と一緒にその場を離れた。
次の来客は、入所希望者だった。
もともと官僚だった人が、精神的苦痛が嫌で、ここに来たらしい。
側近が、簡単なエピソードを教えてくれた。
とはいえ、私には、彼のことが気になっていた。
側近も気にしていたようだ。
「彼をあそこにおいといて大丈夫ですか?」
私は自信ありげにうなずいた。
「彼とは近いうちにまた会うだろう。 その時には、盛大に迎えたいものだな」
「確かにそうですね。 彼の瞳は、最初に所長にお会いしたときと同じ瞳でしたから。 次の出会いが楽しみですね」
私たちは、面会室に歩いて行った。
冷え切った廊下に、二人の靴音が空しく響いていった。