人間社会ではまずない光景が。ここでは浮かんでいる。

彼も、この光景に慣れたのだろう。 特別な感情で見ている様子はなかった。

「ここにいる 『モノ』 って何ですか?」

「ここにいるものは、人ではないし、生き物でもない。存在はしているけど、ただの 『モノ』 なんだよ」

「どういうことですか?」

私は、ポケットから銃を取り出した。

「例えば、どのような物にも名前がある。 それは、物を識別するためで、必要だからね。 それに名前を付けることにより、初めてそれを認識されて使ったりすることができる」

「…………」

例えば、これは 『銃』 というものだよね。 使い方は、君もわかっていると思うが」

そういって私はゆっくりと手を伸ばし、引き金を引いた。

火薬の破裂する音が耳もとで響き、少し鼓膜がいたかった。

そして、十数メートル先では、一体の 『モノ』 が崩れていった。

「しかし、これに名前がなかったら、君はどうする? これを使う方法もわからないが、むしろ、これが道端に大量に落ちていても、気にならないだろうね。 使い方も、危険性も知らないからね」

彼は、中途半端な表情を浮かべていた。