こんなことを言うのは、タブーだが、俺は、養鶏場に行きたくなかった。


どうしても、良いイメージが無いからだ。 偏った固定観念かもしれないが……。


ところが、彼の養鶏場は違っていた。


ゴミ一つ落ちていなく、とても清潔だった。 しかも、空調完備もされていた。


あの、独特の香りまで無かった。


(なんなんだ? ここは……)


今までの固定観念が、崩れていくようだった。


しかも、最も不思議なのは、ニワトリが静かなことだった。




俺は、中を歩き始めた。


自分の靴の音が、部屋の中を響き渡っていた。


ここまでおとなしいニワトリを見たことが無かった。




あまりにも見たことが無い世界だった。


全く言葉も出ない。 俺自身が、このニワトリに飲み込まれていた。


それでも、ゆっくり歩きながら、ニワトリを一羽づつ見ていった。


すると、どこかでささやく声が聞こえた。


「この人間って、俺たちの言葉がわかるかな?」


「無理だろ。 解るわけ無いって。 ありえないよ」


俺は、驚いてあたりを見渡した。 誰が話したのか探したかったからだ。


すると、なぜか怖くなってきた。 


ニワトリたちが、俺をにらんでいるようだった。








全  無帰






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