そんなある日のことだった。
突然、友人が会社にやってきた。 事務所に呼び出されて行ってみると、彼が、半笑いをしながら立っていた。
「どうしたんだよ、突然」
俺がそういうと、彼は、 「ちょっと見に来たんだ」 と答えた。
正直に言うと、俺はとても照れくさかった。 できれば、作業服姿の自分は、見て欲しくなかった。
自分のミステリアス的な部分ではあるが、来てしまったからには、あきらめるしかなかった。
「とりあえず、現場はこっちだから」
そう言って、友人を連れて行った。
職場に行く途中、雑談をしようと話題を振るが、彼は黙っていた。
変に緊張しているのか、表情が、こわばっていた。
現場を紹介して、他愛の無い会話をしても、彼は、全く反応しなかった。
俺にとって、初めて見る部分だった。 普段は表情豊かな印象しかなかったが、今は、感情そのものをなくしてしまった感じだった。
現場では、いつもと変わらない雰囲気だった。
彼と一緒にいると、作業員の一人が、文句を言いに来た。
俺は、適当に流すと、彼に呟いた。
「結局、こんな感じだよ」
彼は、軽く頷いた。 そして、 「ありがとう。 もう帰るわ」 と言って背を向けた。
全 無帰
