俺の感情が、どんどん熱くなっていった。
両親がここにいるのだ。
もし教えてもらわなくても、探すつもりだった。
「もし、両親がいるなら、逢わせてくれ」
所長は、笑みを浮かべた。
「今もここにいるのだろう?」
俺の質問に、所長は答えなかった。
「なんか答えろよ」
そう言ったとき、彼の机のところに、ファックスが届いた。
それを、彼は見ながら叫んだ。
「そうか、どこかで君の事を見たことがあるって思ったら、あの夫婦の息子さんか。やっと、納得したよ」
「どういうことだ?」
「君は、あの施設の本当の意味を知らないようだね。 あそこは、過去の記憶をすべてデータ化するんだよ。 そして、その人の苦痛となっている部分を取り除いているんだよ」
「なんだって……」
「海馬帯の記憶までは、なかなか取り除くことも難しいけど、今までは、何とかうまくいっていたのだよ。 君の両親が来るまでは」
「…………」
「ついこの前までは、国営だけど、資金繰りの関係で悩んでいたとき、君の両親が民営化にしたんだよ」
「あいつらは、政治家ではないけど……」
「もちろんだよ。 ところが、あの人たちは、あるプロジェクトに成功させたんだよ」
俺は、何も言えなかった。 そんなことは全く知らなかった。
「そのプロジェクトの名前が、 『人間ブロイラー計画』 なんだけどね」
何を考えているのか、全く理解できなかった。
「最初は、人を助けるための施設だったけど、この技術を利用することにより、人間をマニュアル化できるんだよ」
「……ふざけるなよ……」
「これで、誰も、もめない環境ができるんだよ。 ある意味、理想郷みたいでしょう?」
「何を言っているんだ?」
「だけどね、根底にある性格だとかは消せなかったりして、さっきのようなことが起きるのですよ」
とうとう俺の頭が混乱した。
全 無帰
