俺は、軽トラから降りた。
何があったのか、全く理解できなかったからだ。
とりあえず、殴られていた男の所へ向かっていく。
やはり、生身の人間みたいだ。
さりげなく近づく努力をしていた。
興味が無いように芝居をする。
すると、笛を吹いた男と目が合った。
彼は、薄ら笑みを浮かべていた。
そこへ、リアカーを引いた男が歩いてきた。
そして、無言で死体をリアカーに載せて去っていく。
(ダメだ、ここにいてはいけない。帰ろう)
そう思って背を向けたとき、声をかけられた。
「ちょっと、お兄さん。どこに行くんだい?」
俺は、苦笑いをしながら、
「ちょっと食事を持ってきたので、届けたいのですが」
「それなら、僕が一緒についていくよ」
そういって、男は近づいてきた。
全 無帰
