「しょーちゃん?どしたの?」
腕を緩めて、俺を見上げている雅紀のおでこにも唇を寄せた。
「……ちょっとお前に惚れ直してただけ」
「くふふふふ。ありがと!よし、じゃあそろそろご飯作ろうかな!」
「あ、そういえばコレ、二宮さんが必要なものが入ってるって……」
カウンターの後ろに消えていった雅紀を追いかけて、さっき床に落としたドラッグストアのビニール袋を持ち上げる。
「ん?」
「あ、いや……なんでもない」
振り向いた雅紀に手を振って、ちらりと見えた袋の中身に苦笑する。
何が入ってんの?って、雅紀が戻ってきて袋の中を覗き込んで、笑う。
「しょーちゃんの、エッチ」
「俺じゃねぇわ!」
あははって声に出して笑いあって、同時に黙り込む。
目を伏せた雅紀の前髪に指を通した。
「やめんなら、今だよ」
「やめないよ。俺だって待ってたんだもん」
何があっても後悔なんてしないって
俺だけしか知らない雅紀が欲しいって
ずっと隣にいたいって
そう思う気持ちは、離れていたって変わることはなくて
「しょーちゃん、向こうで引き留められたんでしょ?」
「え?」
「大野さんがそう言ってたって、かずくんから聞いたんだ。
しょーちゃんが帰ってこなかったらどうしようって、ちょびっとだけ、心配してた」
「ちょびっと、だけ?」
そう聞き返せば、うんうんって真面目な顔で頷く。
「だって、引き留められるってことは、認められたってことでしょ?しょーちゃんにとっては喜ばしい事じゃん。そんな風に言ってもらえるって、ありがたいことだもん。
だから、しょーちゃんがもし帰ってこないって決めたんなら、ちゃんと頑張ってって言わなきゃなって……けど、言えるかなって、ちょっと心配してた」
ほら、そういうとこ。
ちゃんと何が大切かって分かってるとこ。
「うん。本当にありがたいと思ったよ。けど、俺、まだ大野さんから学びたいことがたくさんあるんだ。
俺がこの仕事に誇りを持ってやってこれたのは、大野さんのおかげだから」
「うん。わかるよ、その気持ち。ありがとうって思うから、もっともっと頑張らなきゃって思えるんだよね」
笑顔の下に努力を隠して、周りへの感謝も忘れないとこ。
「結局はそこだよな。うまくいかない日も落ち込む日も、理不尽で腹立つ時もたくさんあるけどさ」
「うん。それでも見ていてくれる誰かがいてくれるから、前に進まなきゃって思えるよね」
そんなお前だから、好きになったんだ。
そんなお前に、負けない自分でいたいって思うんだ。
俺を見上げて、にっこり笑う雅紀の頬にそっと触れる。
「俺には、ずっと肩を並べて歩きたいって思えるやつもいるし」
サイコーな日でもサイテーな日でも
隣にいたいと思える人はお前だけだから
お前といたら、どんなことにだって立ち向かっていけるって思えるから
「しょうちゃ……」
俺の名前を呼ぶ唇に、もう一度そっと触れる。
「それに、こうやって近くで、俺たちを応援してくれる人もいるし……な?」
ドラッグストアのビニール袋をガサリと揺らせば、雅紀が『もぅ!』って、笑いながら俺の胸を叩いた。
