「すっかり秋だなぁ……てか、寒っ」
もっと分厚い上着にしてくりゃよかったかなって呟いて、胸の前で腕を組んだ。
既に赤くなった街路樹の葉が、街灯に照らされてゆらゆらとゆれる。
『なんでこんなにいろんな色になるんだろうねぇ』
俺の横で木を見上げて、くふふふふって楽しそうに笑う声。
『ねぇ、しょーちゃん知ってた?紅葉(もみじ)と楓っておんなじなの。
紅葉(もみじ)と紅葉(こうよう)って同じ漢字でしょ?
紅葉(こうよう)は、黄色くなるのも赤くなるのも紅葉(こうよう)なんだけど、狭い意味の紅葉(こうよう)は、赤くなる葉っぱのことだけなの。
で、赤くなる葉っぱの総称が紅葉(もみじ)で、植物学的には紅葉(もみじ)は楓なの。
だけど、楓のうちの葉が5つに別れているものが、紅葉(もみじ)って呼ばれてるんだよ』
『……ごめん、訳わかんねぇ』
『くふふ。だよねぇ……でも、キレイだよねぇ』
そう言って少しだけ微笑んで、色を変えた葉っぱを見上げるアイツの横顔は、男にしておくのはもったいないな……なんて思うほど、綺麗だったのに。
かさかさと落ち葉を踏んで歩いて
しゃくしゃくと霜柱を踏んで歩いて
ずっと続くと思っていた時間は、あっという間に終わりを告げたんだ。
『しょーちゃん、じゃあ、元気でね?』
『お前もな』
『俺ね、しょーちゃんのこと、大好きだよ』
『おお、俺もお前のこと大好きだわ』
淡いピンクの桜の下で、泣きそうな笑顔を見せたアイツ。
なんでそんな顔するんだろうって
なんで胸が痛いんだろうって
なんで、俺は……もっと、ちゃんと考えなかったんだろう。
いつでも、連絡できるって
いつでも会えるって
なんで、そんなふうに思っていたんだろう。
カバンの中から、小さなメロディーが聞こえてきて、慌てて手を突っ込んでスマホを取り出した。
指をスライドさせて耳に当てる。
「もしもし?」
『……』
知らない番号、だった。
聞き取れないくらい、小さな声だった。
だけど……
……でも……
「まさ……」
「『しょーちゃん?』」
電話と耳から聞こえた声に振り返る。
「……雅紀」
「しょーちゃん……」
何年経っても、忘れることはなかったんだ。
キミの声を。
キミの笑顔を。
そして……
キミへの想いを。

