カズと潤と笑っていたら、智が飛び起きてロッカールームに消えていった。多分、カメラを取りに行ったって言う櫻井くんをカズと潤が、驚いた顔で見つめている。
そうか、2人は知らないんだ。
「智くん、写真で美大行くんですよ」
「「うそだろ?!」」
写真を見たら、分かる。
写真に詳しくない僕でさえも、智の才能はすごいって思ったんだから。
あの日、智に写真を撮られて、心の中を見透かされたみたいな気がして、焦ったんだ。
そんな事あるはずないって、必死に否定しようとすればするほど、苦しくて……
ふと見えたカレンダーに、あの日からまだそんなに日にちが経っていないと気付かされて驚く。
櫻井くんと出会った夏の終わりから、まだ数ヶ月なのに。
もっとずっと長い時間が経っているような気がするのは、どうしてなんだろう。
もっとずっと前から、櫻井くんを知っていたような
もっとずっと前から、そこにいてくれたような、そんな気がするのは……
本当は、打ち上げられた花火みたいに、すぐに消えるはずだったのに……
どうしてか、消えないんだ。
カメラをぶら下げて戻ってきた智をカズと潤が捕まえたのを横目で見ながら、櫻井くんの正面の席に移動した。
「櫻井くん、飲み物くれる?」
「あぁ……うん。なんでもいい?」
「うん。お任せで」
櫻井くんがボトルを並べてからリキュールの蓋を開けて、科学の実験でもしているみたいな真剣な顔でメジャーカップに注いでいく。
その真っ直ぐな瞳とあたたかな手が、僕の中のなにかを変えていくんだ。
「……あれ?」
「簡単な作り方、教えて貰ったんだ。シェイカーは無理だから」
「へぇ……そんな作り方もできるんだね」
櫻井くんがシェイカーを振れるようになったら、きっとかっこいいだろうな、なんて思った自分が恥ずかしくて、櫻井くんから目をそらした。
「どうぞ」
「ありがと」
ことん、と綺麗な青い色のグラスが目の前に置かれる。
なんでこのカクテルを選んだのかって……
僕は、自惚れてもいいのかな。
「櫻井くん『らしい』ね」
そう言った僕をまっすぐ見つめ返す視線は、相変わらず真っ直ぐで、優しい。
「俺、相葉さんが好きだよ」
耳に届いた言葉に、どきんとした。
消えないんじゃない。
消える前に次の花火が打ち上がるんだ。
何度も何度も繰り返し、僕の心を照らしていく。
やっぱり櫻井くんには敵わないやって、青いグラスを揺らしたら、向こうからシャッターを切る音がして振り返る。
「なに二人の世界に入ってんだよ!俺にも飲み物!」
どかっと僕の隣に座った潤が、櫻井くんに声をかける。
「自分でやれよ、エロじじい。俺もバイトは終わりだっての!」
「だから!俺はエロでもじじいでもねぇって言ってんだろ!」
またさっきと同じやり取りを始めたふたりに、うるさいよって笑いながら、カクテルを飲み干した。