「俺はいるよ。ずっと相葉さんのそばにいるから。信じてくれなくてもいいよ。それでもいるから。
ずっとひとりで、怖かったな。寂しかったよな……」
ボクの髪の毛を優しく撫でながら、何度も何度も同じ言葉を繰り返す。
どうして、キミは……
どうして、ボクなんかに……
「櫻井くん……」
「うん」
「お願い」
もう、訳が分からない。
何もかも、忘れたい。
真っ白になるまで、抱いて欲しいのに。
「大丈夫。そんなこと、しなくていい。俺は相葉さんがいてくれたらいい。笑ってくれたらそれでいいんだ」
ボクの唇を受け止めたその人の大きな瞳は、優しく微笑むだけ。
離れることも出来ずに、そのまま、頬を胸にくっつけた。
ゆっくりと脈打つ音が直接身体に響く。
それだけで、心が落ち着いていくような、そんな不思議な感覚に囚われて目を閉じる。
「ちゃんとベッドで寝よ?ここじゃ、風邪ひく」
聞こえた声に、首を振った。
だって、寝たら、寝てしまったら……
「大丈夫、ちゃんといるよ。相葉さんが寝て、明日起きるまで、ちゃんといるから」
『ウソだ』
頭の中で誰かが叫ぶ。
そうだよ、嘘に決まってる。
「……帰れよ」
「帰らねぇよ。もう泊まるって家に連絡したし」
「帰れ」
「帰らねぇ」
置いていかれるくらいなら、最初からいない方がマシだ。
要らない。
そんなのは、要らない。
なのに、櫻井くんは腕を突っ張った俺を、それ以上の力で抱き寄せた。
「離せ!離せよ!」
「離さねぇよ」
「ウソばっかり!」
「嘘なんかつかねぇって」
落ち着いた声が、癪に障る。
年下のクセに。
ガキのクセに……
「ウソばっかりなんだよ!どいつもこいつも!」
睨みつけた俺を、真っ直ぐに見つめ返す。
「それは、相葉さんがそうだから、だろ。
相葉さんが、嘘ばっかりついてるから、だろ」
低い落ち着いた声が、耳から身体から、響いてくる。
「……俺が……?」
いま、なんて言った?
俺が、嘘ばっかりついてるって、そう言った?
「素直に言ったらいいんだよ。『そばにいて』って、『ひとりにしないで』って」
優しく微笑んだ櫻井くんが、ボクの頬を撫でながら言う。
大丈夫
大丈夫だよ
そんな声が聞こえて来た気がした。
そんなわけ、ないのに。
「そんなの……!!!」
言えるわけ、ない。
「言ってよ」
「……」
「俺に、言ってよ」
言えるわけない。
期待なんて、しない。
なのに……
「そばにいてって、ひとりにしないでって、俺に、言ってよ」
「……そんなの……言えるわけ、ない……」
何度も優しく同じ言葉を繰り返して、優しく僕に触れる櫻井くんに……僕は、そっと身体を預けた。