「お疲れ様でした」
職員通用口から外へ出て、ぐるりと遠回りをして地下道から繋がっている入口へ向かう。
フロントの目の前を通るのは、なんとか避けたい。
「手汗、ハンパねぇな……」
ルームキーをエレベーターのカードリーダーに差し込んでから階数ボタンを押して、静かに息を吐いた。
『あのヒト、お風呂も長いし、もしかしたら寝てるかもしれないから、鍵開けてさっさと部屋入ってよ?
どこに誰がいるのかわかんないんだから、部屋の前で突っ立ってるのだけはやめてくださいよ』
さっき、二宮さんに言われた言葉を思い出しながら、ポケットに突っ込んだカードキーをぎゅって握る。
「……あ……」
「おっ……」
フロアに着いたら、エレベーターホールに二宮さんが立っていた。
「すげぇ、グッドタイミング!!
俺ちょっとコンビニ行くって出てきたから、鍵使って入っちゃってね。あのヒト、俺だと思ってびっくりするよ」
「え、相葉くんに言ってないの?」
「そ、サプラーイズ」
楽しそうにそう言って、明日は昼に迎えに来るからって伝えといてってウィンクを決めて二宮さんはエレベーターに消えていく。
相葉くんに言ってないとか……余計に緊張するじゃねぇか。
少し震える手でカードキーをドアに差し込んで、ランプが緑になったのを確認してからドアを開いた。
「あれ?早くない?お財布でも忘れた?」
ひょこっとこちらに顔を出した相葉くんが、驚いた顔で固まる。
「よ。久しぶり」
そういった瞬間、どんって音がするくらいの勢いで胸に飛び込んできた相葉くんの背中にそっと手を回した。
「元気だった?」
「元気じゃないよ」
ぎゅうって、俺にしがみつく相葉くんの背中をぽんぽんって叩いて、柔らかい髪の毛にキスをする。
「さっき、来た時……櫻井くんカウンターに居なかったから……会えるかなって期待してたのになって……」
「うん」
「なんだー、いなかったーって思ってたのに……」
「うん」
俺にしがみついたまんまの相葉くんを抱きしめて、今度はおでこにキスをして
「櫻井くん……」
ようやく顔を上げた相葉くんの、俺の名前を呼ぶ唇にもそっと触れる。
「……それだけ?」
俺の首に腕を回した相葉くんが、綺麗に微笑んでそう言うから……さっきよりもずっと深くて長いキスをした。