寒いから早く帰ろうって、俯いたままの雅紀の手を引いて歩いた。
家に着く頃にはすっかり泣き止んだ雅紀が、夕飯何にしようかなぁって冷蔵庫を覗き込む。
「なぁ……なんでウチに来る時はカラスだったんだ?」
好きな時に変身できんの?って聞いた俺に、冷蔵庫をぱたんと閉じてから、ふるふると首を横に振った。
「自分じゃどうにも出来ないの。仕事の時はしょーちゃんに頼んで、御守りとか持っていくんだ。神域から遠ざかるほど、この姿を保っているのは難しいみたいで……
だから、仕事の時も1泊が限度だし、何かあったらと思うと怖くてホテルになんて泊まれなくて、いつもさとちゃんのとこ転がり込んでたの……」
ごめんねって小さく言った雅紀の頭を 謝ることじゃねぇだろって、こつんって小突いた。
「しょーくんが、もう、ここじゃなくても、しょーくんの近くじゃなくても大丈夫って言ってたのは、なんで?」
玉ねぎを切りながら雅紀が、うーんって小さく唸る。
「さとちゃんが、名前……呼んでくれたから、じゃないかな」
「名前?」
「うん。『雅紀』って、名前の意味も分かった上で呼んでくれたでしょ?名前には力があるんだよ」
「あぁ……」
そういえば、そんな話をどこかで読んだことがある。名前を付けることによって見えないものを縛ることが出来るって。
「だから、さとちゃんの近くにいても、しょーちゃんの近くにいるのと同じって事になるのかな?」
「……けど、俺、神様なんかじゃないけど」
しょーくんは『現人神』って、そんな家系なだけだってしょーくんは言ってたけど、やっぱりしょーくんには特別な何かがあるんじゃないかって、俺じゃダメなんじゃないかって不安になる。
「あのね、さとちゃん。
先々代が言ってたんだけど……特別な力は必要ないんだって」
玉ねぎを切り終わったまぁが、俺を振り返って恥ずかしそうに笑う。
「……『気持ち』が大事なんだって」
「気持ち……?」
どういうこと?って聞き返そうとした瞬間に、そういうことかって納得した。
「だったら俺、しょーくんより頼りになるな」
「え?」
肉を炒めながら、雅紀が振り返る。
「気持ちが大事なんだったら、俺、しょーくんよりも……いや、誰よりも最強だと思う」
ぽかんと俺を見つめたまま、動きを止めた雅紀が、あって小さく呟いて、みるみる赤くなる。
「あ、あのっ!!!ご飯すぐ出来るからっっ!」
「うん。手伝うよ」
俺より雅紀の方がでっかいってのが、ちょびっとだけ気に食わないけど。
でも、雅紀を守りたいって、雅紀が好きだって、それはきっと、他の誰よりも強い気持ちだって思ってるから。
「さとちゃん」
「ん?」
「ありがと」
「おう」
また、すんって鼻をすすった雅紀の背中をぽんって叩いた。
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お話の中の素敵イラストはあみんちゃんに描いてもらいました(♡´艸`)
今回のイラストのかきあげも
もちろんありますよ(♡´艸`)
あみんちゃん、いつもありがとー♡♡♡
