「さとちゃん……さとちゃん!」
俺にしがみついて、俺の名前を繰り返し呼ぶ雅紀の背中をそっと撫でる。
俺に覆いかぶさるようにしてしがみついてる雅紀の肩越しに、しょーくんを見た。
「……しょーくんの守りたいものって、なんだ?」
「俺?」
俺の問いかけに、しょーくんがとぼけた声を出す。
「それ聞いたら、場所変えようってしょーくんが言って、ここに来たんだろ」
「そうだったっけ?」
「……しょーくん」
「ははっ、ごめんごめん」
しょーくんが楽しそうに笑ってから、急に真面目な顔になる。
「俺の守りたいものは、雅紀だよ」
腕の中で雅紀がぴくりと肩を揺らして、俺も雅紀の背中に回した手に力を込めた。
「……それから、智くんと、潤とかず……」
俺を見て優しく微笑んだしょーくんが、言葉をつなぐ。
「俺は、この場所とここに住む人を守りたい……って言うか、守らなきゃいけないんだよ」
「守らなきゃ、いけない……?」
オウム返しにした俺の言葉に、口を斜めにぐって結んで、しょーくんが頷いた。
「しょーちゃんは『現人神』なんだよ」
涙が止まったらしい雅紀が、俺から身体を離して、すんって鼻をすすった。
「……あらひとがみ?」
「うん。しょーちゃんの家は、代々ここの土地神様なの」
「土地神様?え?なにそれ?しょーくんが神様ってこと?」
驚いてしょーくんを見たら、しょーくんは困った顔になって鼻の横をぽりぽり掻いた。
「いや……あのさ……そういう家系ってだけで、俺がなにかできるわけじゃないんだよ。俺だってそんなの、信じてなかったし。
けど、あの日……ここで智くんが雅紀を見つけた時、本当の事なんだなって思ったんだ。
俺が、雅紀を、みんなを守んなきゃいけないんだって……」
「……あの日……」
俺が、カー子を見つけた日。
カー子じゃなくて、あれが雅紀だったって事だよな?
隣に立つ雅紀を見上げたら、無言で小さく頷いた。
「俺、あの日が独り立ちの日だったんだ。
本当は、もっと遅い時間に先々代に呼ばれてたんだけど……独り立ちするのが嬉しくて、こっそり早く出て、しょーちゃんのとこに来ちゃったんだよね」
「先々代?」
「ウチのばぁちゃん。
あの日、ばぁちゃんから早く帰れって言われてたんだ。大事な日だから、あんまり外に出るなとも言われてて……けど、そんなの、俺には関係ないと思ってたし。
俺が、ちゃんとしてたら……雅紀はあんな怪我、しなくて良かったんだ……」
そう言ったしょーくんの顔が、痛々しく歪んだ。