「しょーちゃん、ゆっくりしてね」
「ん、雅紀もな」
じゃあまたねって、一瞬だけ唇を合わせて、しょーちゃんが車のドアを開けた。
頑張り屋さんな俺のコイビトは、ゆっくりと歩いて門の向こうに消えていった。
しょーちゃんには、お正月の間にゆっくり休んでもらわなきゃ。
心配だけど、しょーちゃんだから大丈夫。
そう自分にも言い聞かせて、その後ろ姿を見送って、ギアをドライブに入れた。
毎年、慌ただしい年末。
本当にありがたいことだと思うけど。
「あ、やべぇ。泣けてきちゃう」
優勝旗を持ったニノの背中は、小さいけど、逞しくて、ほんとにほんとに嬉しくて、誇らしくて。
近づいていったおーちゃんに、アンタはあと!って鋭く言い放ったニノは、相葉さんって優しい声で俺を呼んで、一番最初に優勝旗を持たせてくれた。
「ちょっとー、こんな時にやめてよね、ホントに……」
流れてきたUBのメロディに、やっぱり涙腺がゆるんじゃう。
そんな俺ら、なんだよ。
誇らしげな気持ちで見た、新聞の記事。
ニノの笑顔にまた、俺も笑顔になる。
だけど、これじゃあ……
スマホを取り出して、しばらく見つめてからまたポケットにねじ込んだ。
俺が言わなくても、大丈夫。
ニノにはおーちゃんがいるから、大丈夫。
ポケットの中でスマホが震える。
『よ』
「しょーちゃん……」
『大丈夫か?』
「俺は、平気」
『だよな』
「しょーちゃんは?」
『雅紀ロス』
そう言うしょーちゃんに、同時に吹き出して笑う。
俺は平気。
切り取られた言葉には、棘しか残らない時があるって知ってるから。
その棘がどこに刺さるかまで、分かってて言ったんだろ?
自分に刺さるように仕向けたくせに、俺にも刺さったんじゃないかって、そうやってアイツは自分を責めるんだ。
真っ直ぐなんだよ、ニノは。
真っ直ぐで、強がりで。
そのくせ、傷つきやすいんだ。
「しょーちゃん」
『ん?』
「大好き」
『俺も』
何も言わなくたって、分かる。
分かるからさ、ニノ。
「お正月、楽しんでね」
『お前もな』
「次会うときはイケメンでしょ?」
『うっさいわ』
あはは!って笑って、しょーちゃんがまたなって言う。
「ありがとね、しょーちゃん」
暗くなった画面を撫でて、ポケットにしまおうとして、手を止めた。
「ねー!母さん!紅白見ていい?」
そう聞いたけど、返事を待たずにテレビとレコーダーのスイッチを入れて早送りして、一時停止。
何枚かテレビの画面を撮って、そのうちの1枚を選んで壁紙に設定した。
「くふふ、いい笑顔。そうだ、みんなにも送っちゃおー」
優勝旗を持つニノと、その後ろで笑顔の俺ら。
「嵐、最高!」
ニノが俺を守ろうとしてくれたんだって、分かってるから。
いつも、俺らを守ろうとしてくれてるって知ってるから。
嵐が大好きだって、知ってるから。
だから、大丈夫。
だから、笑ってて。
そんな気持ちを込めて、送信ボタンをえいって押した。
