「高澤くんともう、キスした?」
「してないよ!そんなの、ないないない!やめてよ、みーちゃん!」
だって付き合ってるんでしょ?ってみーちゃんが口を尖らせる。
委員会が長引いて、早く部活に行かないと!って急いで階段を降りてたのに、みーちゃんが急に変なことを言い出すから、ひろちゃんとふたり、階段から落っこちそうになった。
「みーちゃんこそ、リュウくんと付き合ってるんでしょ?」
「え!ちょっと、何それ!どこ情報?!」
慌て始めたみーちゃんにひろちゃんと笑っていたら、リュウくんがものすごい勢いで階段を上がってきた。
「まりん!!!」
「どしたの?」
みーちゃんがそう聞いても、リュウくんは、まりん!って私の名前を呼ぶだけで……
「いいから、来て!今すぐ来て!」
そう言って私の手を引っ張って、階段を駆け下りる。
「ちょっと!リュウ!」
後ろからみーちゃんとひろちゃんの声が聞こえたけど、なんだかすごく嫌な予感がして、リュウくんと走った。
リュウくんが走って向かってるのは、体育系の部室棟。
しょーまが、怪我した?
違う、それだったら、先生から連絡が来るはず。
少し後ろをみーちゃんとひろちゃんが追いかけてくる。
「ふざけんなよ!」
聞こえてきた、しょーまの声。
しょーまが、誰かとケンカしてる?
『バスケ部』って書いてある看板に、どきんとした。
しょーまは、サッカー部。
バスケ部にいるのは……
「うっせぇな」
聞こえた声に足が止まる。
リュウくんが困った顔で振り返る。
こんなの、やだ。
聞きたくないし、見たくない。
「まりん、頼むよ、翔雅を止めてくれ!
騒ぎになったら、試合に出れなくなるんだよ!」
それは、分かってる。わかってるけど……
「なんで、私?」
思わずそう呟いたら、リュウくんがますます困ったって顔になった。
「もうちょっと軽くいけんのかと思ったけどな。だってさ、連れて歩くなら可愛い方がいいに決まってんじゃん?
それに、国民的スターのムスメなんて最高じゃん?」
聞こえた言葉に、耳を塞ぎたくなった。
私が悪いんだ。
ちょっとかっこよくて、ちょっと優しくしてくれて、『好き』って言ってくれたのが嬉しくて舞い上がってた。
私を大事にしてくれる人を選べって、パパにもママにも言われてたのに。
「まりんと別れろ、今すぐ」
「そんなの、なんでお前に言われなきゃなんないんだよ?あ、それともアレか?お前らデキてんの?」
「お前ッッ!!」
「最っ低!!!」
何が何だか、分からなくて
分からなかったけど
しょーまと私の声が重なって
右の手のひらがじんじん痛くて
びっくりした顔の高澤くんが、ほっぺたを押さえて私を見ていて
私は、大好きな匂いの腕に抱きしめられてて
「まりん、帰ろう」
優しいその声に、必死に泣くのを我慢して頷いた。