しばらく膝を抱えてから、ゆっくりと立ち上がって、床に散らばった服をまた身につける。
カバンを取りにリビングに出たら、後ろから潤の声がした。
「あれ、なにしてんの?」
「……帰る」
「バカなの、お前」
頭を拭きながらバスルームから出てきた潤が、俺の横を通り過ぎながらそう言って、冷蔵庫からビールを取り出した。
「雪すげーぞ。明日、早く送ってやるから、早くシャワー浴びてこいよ」
「でも、帰る」
ビールをカウンターの上に置いた潤が、俺の腕を掴む。
「離せよ」
「離すかよ。今は俺のモンだろ?」
引き寄せられて、あっという間に唇を塞がれて、ビールのかおりが口の中に広がった。
「んんっ……」
もがけばもがくほど、強く抱きしめられて、深くなるキス。
抵抗をやめて受け入れれば、ゆっくりと腕が解かれる。
「シャワー、浴びてこいよ」
「……」
潤に背中を押されて、バスルームに向かう。
俺は、いつからこんなに弱くなったんだろう。
あんなメッセージひとつが、こんなにも嬉しくて、こんなにも痛い。
『ホントは誰かに大事にされたいんだろ』
智に言われた言葉が、あの日から何度も繰り返される。
そんなこと、あるわけない。
あるわけないって思いながら、その言葉と一緒に思い浮かべるのは、ひとりだけ。
「バカだろ」
何も無かったようにメッセージを送ってくるなんて。
誕生日、覚えてた。
スタンプ探しておくって言ってたのも、忘れてなかった。
なんで?
なんでそんな、期待させるようなことするの?
俺に、何を求めてるの?
期待されたって、応えられるものなんてない。
俺はキミに何もしてあげられないのに……
「バカじゃないの……」
もう1度そう呟いて、シャワーの栓を勢いよくひねった。