「さ、とし……くん。この人って……」
声が掠れる。
「美人だろ?この人だよ、オッサンにナンパされてた人。
ほら、この写真とかすげぇキレイだろ?」
嬉しそうに話す智くんとは反対に、俺の気持ちはどんどん沈んでいく。
俺の知らない相葉さん。
知りたくない、相葉さんのイチブ。
「智くん、ここってさ……」
「あー、そうそう!ここな!
すげーだろ?マジで天井に鏡ついてたぞ!」
「まじか!って、いや……そこじゃなくて……」
カメラの液晶画面から顔を上げた智くんが、不思議そうな顔で俺を見た。
「……」
なんて聞いたらいいんだろう……
黙り込んだ俺をじっと見つめて、あぁ!って、智くんが声を上げて、ふにゃんって笑った。
「大丈夫!まだ仲間だよ!」
「は?」
「たまたま会って、写真のモデルしてもらって、終電なくなっちゃったし、寒いし、で、近くにあったホテルに入っただけで……」
「……マジで?」
「だいじょぶ!翔くんを置いてオトナになったりしてないから!」
いや、俺が今、気にしてんのはそこじゃねぇけど。
「けど、勿体なかったかなぁー……
写真撮ってたらさ、すげー不思議な人でさ……なんとも言えない表情(かお)すんだよな。もっと色んな表情、見てみたかったなぁ」
カメラを抱えて、智くんがふんわりと笑う。
もっと色んな表情って……それって、なんかもうエロい響きにしか聞こえねぇんだけど……
「……もしかして、智くんも、惚れちゃったの?」
無意識に口からこぼれた言葉に、智くんが眉毛をぴくりと動かした。
「……『も』?」
「え?」
俺、今なんて言った?
智くん『も』って、言った?
智くんは、いつもは他人の話なんてほとんど聞いてないくせに、なんでこういう時だけは耳ざといんだろう……
「いや、だってほら……オッサンがナンパすんのもわかるって、前言ってたじゃん……だから……」
自分でも笑えるくらい、声が震えてる。
膝の上で握りしめた拳が、力を入れすぎているせいで真っ白になった。