「雨かよ」
朝起きて、どんよりと暗い空を見上げる。
ますますどんよりするじゃねぇか、って自分勝手な理由で空を睨んだ。
テキストを適当に突っ込んで、ドアを開けてから慌てて家の中に戻る。
「寒っ!」
シャツ1枚で出かけるには肌寒くて、パーカーを羽織った。
季節はちゃんと進んでるのにな……って、ため息をつく。
俺と相葉さんは何も変わらない。
変わりようがない、のかな。
どんどん雨脚が強まる中、図書館へ歩く。
こんな降るんだったら、家にいたらよかった。
入口で傘についた雫をはらって、くるくると丸めながら、自動ドアを抜ける。
ちらっと見えたカウンターには相葉さんの姿がなくて、傘立ての鍵を取りながら、馬鹿じゃねぇ?って自分に呟いた。
相葉さんがいつ、休みなのかも知らねぇ。
こんな雨の中出てきたけど、相葉さん、今日は休みかもしれねぇじゃん。
馬鹿じゃねぇ?俺……
カウンターの奥から出てきた、長野さんが「お!今日も来たんだ」って言うから、「おはようございます」って、頭を下げてから学習スペースに向かう。
腹減ったな……
ふと腕時計を見たら、ちょうど針が真っ直ぐ重なるところで、自分の腹時計の正確さに吹き出しそうになった。
メシ、どっかで食ってから午後もまた来るか、もう帰るか……
カウンターを見てもやっぱり相葉さんはいなくて、ため息をついてから、カバンに荷物をしまって立ち上がる。
「あ、終わった?」
カウンターの前を通りかかったところで、長野さんが声をかけてきた。
「あ、はい」
「もし時間あったらさ、相葉くんさっき来て、今読み聞かせの絵本選んでるからさ、一緒に選んで?」
長野さんの言葉に無言で頷いてから、2階の絵本コーナーに急いでないふりをして急いで向かう。
……いた。
小さな本棚の前にしゃがみ込んで、楽しそうに絵本を出したりしまったりしてるその人にそっと近づく。
広めの襟ぐりから覗く首元に、どうしても視線が釘付けになる。
触りたい
そう思うのは、おかしいのかな。
「っっ!!!」
襟元に見えたモノに、心臓が痛いくらいぎゅってなって、パーカーを相葉さんの肩に投げつけるように掛けた。
「ひゃ!な、なに?!」
「見えてる」
「あ、櫻井くん……びっくりしたよー、なに?」
俺のパーカーを握って、相葉さんが笑う。
その顔を思わず、睨んだ。
「首んとこ、見えるよ、それじゃ……」
「……え」
相葉さんの顔から笑顔が消えた。
「次のおはなし会、来れねぇから……」
それだけ言って、走って図書館を後にした。