ふと横を見たら、おにぎりを口いっぱいに頬張っている櫻井くんが見えた。うんまって、本当に美味しそうに食べてる。
コンビニのおにぎり、だよ?
もぐもぐしてる櫻井くんと目が合った。
「いっぱい入れすぎじゃない?」
頬袋があるみたいって、言葉にしちゃったらおかしくて、声に出して笑っちゃった。
ごくんって、おにぎりを飲み込んだ櫻井くんが、だって美味いんだもんって、口を尖らすから、ますますおかしくなって笑う。
こんなふうにあったかい気持ちで笑うのって、久しぶりな気がする。
コンビニのおにぎりが美味しいって思えたのも、久しぶりな気がする。
「……あ……」
真ん中が静かになったなと思ったら、潤くんがおにぎりを持ったまま、ゆらゆらしてる。
櫻井くんがそーっと手を回して潤くんの手からおにぎりを取った。
まだ口がもごもご動いてる。
「くふふ、かわいいね」
「たくさん遊んだからなぁ」
櫻井くんが潤くんの頭を膝の上にのせて優しく見つめる。
「櫻井くんはさ、将来の夢とかってあるの?」
「特にこれといってないかなぁ。普通にサラリーマンして、海外で働いてみたいとかそんな感じです……相葉さんは?なんで司書になったんですか?」
「うーん。本が好きだからって言うのもあるけど、大学生の時にバイトしててそのまんま、って感じかなぁ……」
「でも、『おはなし会』の時とか、カウンターで説明してる時とか、相葉さんすごい楽しそうですよね」
「そう?ふふ、嬉しいなぁ。櫻井くんもさ、何でもやってみたらいいよ。苦手だと思ってたものが意外と得意だったりすることもあるしね」
「はい」
櫻井くんが真面目な顔をして返事をしてくれた。
真面目な子なんだよね、やっぱり。
昼ご飯を食べ終えて、すっかり熟睡している潤くんを櫻井くんの背中にのせるのを手伝った。
「今日はごちそうさまでした。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる櫻井くんに、僕も慌ててぺこりと頭を下げた。
「こちらこそ、お手伝いありがとう!あと、ボランティア登録もありがとうございました」
「じゃあ、また」
「うん、またね」
櫻井くんの笑顔につられて、僕も笑顔になって手を挙げる。
どんどん遠くなる背中を見送った。
『また』って、いつだろう。
『またね』って、いつなんだろう。
そんな約束、したことあったかな。
次を期待したことなんて、あったかな。
さっきまで気にならなかった熱気が、肌にまとわりつく。
「あっつ……」
じわりと滲んだ汗を手の甲で拭って、図書館への帰り道を急いだ。