「じぃちゃん、これ、サインよろしくお願いします」
夕飯の後、テーブルを綺麗に片付けてから、プリントを差し出した。
「いよいよ、だなぁ」
そのプリントを眺めて、じぃちゃんが嬉しそうに言う。
「……うん」
「『鷹乃学を習う』だなぁ……」
「へ?たか?」
「『鷹乃学習』ともいうな」
「たかわざ……???
たかすなわちわざをならう???」
早口言葉みたいなじぃちゃんの言葉を繰り返した俺を見て、ふふふふふって楽しそうに笑ったじぃちゃんが、胸ポケットから万年筆を取り出した。
じぃちゃんの万年筆は時計と同じで、やっぱり古いもの。いいものはちゃんとメンテナンスすればいつまででも使えるから、大人になったら良い万年筆をひとつ買いなさいってずっと言われてる。
じぃちゃんの手が、じぃちゃんの名前を書いていくのを眺めて、ようやくスタートラインに立てるって、そんな気持ちがして、背筋が伸びた。
「はい、書いたぞ」
「ありがと。明日はさ、オープンキャンパスに行ってくるね」
「その後に翔くんとデートかな?」
「でっ……デートじゃないよっ」
じぃちゃんにサインしてもらった進路希望調査票を握りつぶしそうになって、慌ててクリアファイルに挟んでカバンにしまった。
「デートじゃなくって…しょーちゃんが、大学の中案内してくれるって。夕飯は、しょーちゃんと食べてくるか、ウチで食べるか、してもいい?」
「たまにはふたりでのんびりしてこい。じぃちゃんは山さんとこ行くから気にせんでよろしい。
せっかく期末試験も終わったんだから、少しは遊ばないとなぁ。遊びだって勉強と同じくらい大事だぞ?
夏休みに泊まりで旅行くらいしてきたらどうだ?」
「もぅ!だからそれ!保護者の言うことじゃないよね!」
「若いうちはいろいろ経験しておくべきなんだよ」
「だから!じぃちゃん、おかしいんだって!」
慌てる俺を見て楽しそうに笑って、じぃちゃんが作業場に消えていった。
い、いろいろ経験って…なにをだよ?
お泊まりっていったらさ、いろいろ、諸々、セットでついてくるじゃんか。
しょーちゃんとふたりっきりで何もないとか、絶対ないし……
って、そんなふうに考えるなんて、めちゃくちゃ期待してるみたいじゃん、俺。
ひとりで恥ずかしくなって、ひゃあーって、頭を抱えたら、机に置いたスマホが震えて、びくぅってなった。
画面には、大好きな人の名前。
この状態で、普通に喋れるかな……
ふぅーって、大きく息を吐いて、そっと画面をタップした。
「もぅ!だからそれ!保護者の言うことじゃないよね!」
「若いうちはいろいろ経験しておくべきなんだよ」
「だから!じぃちゃん、おかしいんだって!」
慌てる俺を見て楽しそうに笑って、じぃちゃんが作業場に消えていった。
い、いろいろ経験って…なにをだよ?
お泊まりっていったらさ、いろいろ、諸々、セットでついてくるじゃんか。
しょーちゃんとふたりっきりで何もないとか、絶対ないし……
って、そんなふうに考えるなんて、めちゃくちゃ期待してるみたいじゃん、俺。
ひとりで恥ずかしくなって、ひゃあーって、頭を抱えたら、机に置いたスマホが震えて、びくぅってなった。
画面には、大好きな人の名前。
この状態で、普通に喋れるかな……
ふぅーって、大きく息を吐いて、そっと画面をタップした。