「ごめん、しょーちゃん。ここ、入ってもいい?」
雅紀が立ち止まったのは、どこをどう見てもレディースしか扱ってなさそうな店。
「いいよ」
多分、洋服が見たいんだろうなってOKして、並んで店に入った。
ひとりで入るのは勇気がいるもんな……ふたりでも、かなり勇気いるけど。
「わぁ……」
雅紀の目がキラキラ輝いた。
近寄ってきた店員に、雅紀がデザインの勉強をしていて、少し見せていただけますか?って話したら、店長らしきその人が、にっこり笑って、どうぞごゆっくりって笑顔で離れていった。
いろんな服を手に取って、じっと眺めている雅紀。邪魔をしないように、少し離れたところで待つ。
「しょーちゃん、ごめんね。ありがとう」
一通り店の中を見て満足したらしい雅紀が、俺のところに小走りで寄ってくる。
「よろしかったら、これ、どうぞ。今シーズンのカタログです」
さっきの店長らしき人が、分厚いカタログを袋に入れて渡してくれた。
「いいんですか?ありがとうございます!」
雅紀が嬉しそうに受け取って、深々とお辞儀をした。
「いいですね、ご兄弟でお買い物。またいつでもお越しくださいね」
笑顔の店員の言葉に、笑顔でぺこりと頭を下げて店を出た。
「兄弟、だって……」
不満そうな雅紀の声。
ま、でも世間一般からしたらそうだよな。
仲良さそうだけど、歳が離れてるし……ってなったら、兄弟ってなるよな……
昨日だって、俺が間に入らなかったら、雅紀の気持ちは変わっていたかもしれないし……
……めんどくせぇな、俺。
これじゃ、石橋を叩きすぎて壊しそうって言われても仕方ないな……ってため息をつきそうになった俺の袖を、雅紀がちょんちょんって引っ張った。
「しょーちゃん!あそこのジェラート、めっちゃ美味しいんだって!」
「ええ?ジェラート食べるには寒くねぇ?」
「でも食べたいー!半分こずっこしよ?ここは俺の奢りー!」
「なんだよ、半分こずっこって」
早く早くって腕を引っ張られて、行列の一番後に並ぶ。
俺の指を遠慮がちに掴んで、俺を見上げた雅紀の笑顔につられて、俺も笑って。
やっぱり、この笑顔を見ていたいって、そう思って……少し冷たくなっていた雅紀の手をコートのポケットにそっとしまった。