「……やっぱりムカつく……」
試着室から出てきた雅紀にそう呟く。
「え?」
「ほんっっとに無駄にスタイルいいな、お前!」
細身のロングジャケットに、細身のパンツ。
インナーは白ティーなのに、それがまたすげぇおしゃれな感じで、どっかのファッション誌のグラビアにそのまんま出てきそう。
「あ、お直し必要なさそうですね。すっごく良くお似合いです!」
店員ですら、見惚れてるじゃん。
「しょーちゃん、どう?」
「今まで見た中では1番似合ってると思う」
「ほんと?じゃあ、これにしよ!」
「じゃあ、シャツは俺が買ってやる。来月、誕生日なんだろ?」
えー!って驚いている雅紀を横目に、あのスーツに似合いそうなシャツ、持ってきてって店員に頼んで、選べって雅紀の前に並べてもらった。
「しょーちゃん、悪いよ」
「いいんだって、俺がしてやりたいんだから。記念すべき20歳の誕生日だろ?そこは素直にありがとうって、受け取っておけ」
「……うん。わかった。じゃあ、これにします。しょーちゃん、ありがと」
「しょーちゃん、ありがとうございました」
店を出たところで、ショップの紙袋を抱えて、雅紀がぺこりと頭を下げる。
「や、そんな頭下げられるようなことはしてないけど」
雅紀のこういう礼儀正しいところ、いいんだよなって、口元が緩む。
店のガラスドアに映る自分の顔を見て、はっとする。
……危ねぇ。外だ、外。
にやけてたら完全に怪しいヤツになんだろ。
「いいの見つかって良かったな。ちょうど駐車場近いから、車に置いてくる?」
「うん」
しょーちゃんって、本当に紳士だよねぇって、くふふふふって笑う雅紀の腕をつかむ。
「段差!」
「わ!あぶなー!しょーちゃん、ありがと」
「頼むから、前見ろって!てか、足元注意して歩いてくれ。危ねぇから」
「くふふ、やっぱりしょーちゃんは、お母さんだ」
「や、そこはお父さんで」
また同じやりとりを繰り返して、雅紀が俺を見上げてにっこり笑う。
身長変わらないくらいなのに、どうやったら上目遣いになんだよって思うけど……
「ホントは、コイビトがいいんだけどな」
聞こえた雅紀の声に、今度は俺が段差を踏み外しそうになって……雅紀があひゃひゃって、楽しそうに笑った。