コーヒーのいいにおいで目が覚める。
「あ、しょーちゃんおはよ。ちょうどコーヒー入ったよ」
「おはよ」
差し出されたマグカップをありがとって受け取った。
テーブルの上にはサラダとフルーツがすでに用意されていて、もうすぐパンも焼けるよ?ってスクランブルエッグを皿に移しながら雅紀が笑う。
「今日はどうする?スーツ買いに行くのさ……ちょっと遠出してアウトレット行ってみる?」
「あ!新しく出来たとこ!行きたい!行ってみたい!」
やったー!って雅紀が手を挙げた瞬間にトースターがチーンって音を立てて、食べよ?って笑顔の雅紀が俺の目の前に座った。
「「いただきます」」
数ヶ月前まで、1人の方が気楽でいいやって思ってたのに……雅紀と出会って、何度かお互いの家を行き来して、泊まって……
そしたら、ひとりの休日の朝がなんか物足りなくて……目の前にいる雅紀を見れば、自然と頬が緩む。
そんな俺を見て、雅紀が首を傾げた。
「スーツは自分で作らねぇの?」
「うーん。作れると思うけど、来月までにだとちょっと厳しいかなぁ……課題もあるし」
「あー、そっか。そうだよな……しかし、すげぇよなぁ、手に職があるって……」
「俺はバリバリ仕事してるしょーちゃんの方がかっこいいと思うけどなぁ」
「……そう言えば、さ……雅紀はどうすんの?就職。来年までなんだろ?学校」
うんうんって頷きながら、トーストの最後のひと切れを口に入れて、俺を見てにっこり笑う。
「俺はねぇ……しょーちゃんのお嫁さんになりたいの」
「へ……?」
箸で掴んだミニトマトが、ぽとってテーブルの上に落ちて転がった。
トマトを俺の皿に戻して、また、雅紀がくふふって笑う。
「しょーちゃん、目が落っこちちゃいそうだよ。
……仕事はね、悩んでる」
なんて返事をしたらいいのか、分からなかった俺は、そのまま黙ってトマトを口に入れた。
留学もしてみたいんだよねって、ぽそっと呟いた雅紀を見上げた。
「そうだなぁ……やっぱり、パリとかロンドンとかニューヨークとかのイメージだもんな、デザイン系って……」
「うん。でもまだ何がやりたいって明確なのが見つからないから、そんなんで出かけていってもダメじゃないかなって思ってて……」
「そっか……これだってものが見つかるといいな」
「うん。ありがと……ねぇ、俺と会えなくなったら、寂しい?」
「……そうだな。寂しいな……」
「……え……」
雅紀が目を丸くして俺を見るから……
「予想通りのところでコケる雅紀が見れなくなるのは寂しいな」
にやりと笑いながらそう言ってやった。
「もう!しょーちゃんはデザートなしねっ!」
「わー!ごめんごめん!デザートください!」
ふたりで俺のフルーツの載った皿を取り合って、同時にぷーって吹き出して、そのまま暫く笑いあった。