「うんまかった!」
あっという間にラーメンを平らげて、大野くんが満足そうに笑った。
「満足した?」
「なんか難しい名前のいろんなの食べるよか、こっちの方が全然いいや」
財布を出そうとした大野くんの手を止めて、支払いを済ませて外へ出る。
先に外に出ていた大野くんが、ごちそうさまでしたって真面目な顔をして言うから、思わず吹き出した。
「いいって、そんなかしこまらなくても!この間、貴重な絵をたくさん見せてもらったから、そのお礼ってことにしておいて?だいぶ安上がりだけど」
俺の言葉にぺこりと頭を下げた大野くんの肩をぽんぽんって叩いて、車を取りに行こうってマンションに向かって歩き出した。
「美術展終わったら、まーちゃんの絵、貰ってもらえませんか?」
しばらく無言のまま歩いていたら、突然、大野くんの声が聞こえて、驚いて振り返る。
「え?俺に?!」
「……はい。櫻井さんに持っていてもらいたいんです……迷惑、ですか?」
神妙な顔で、大野くんが言う。
「……いいの?大切な作品じゃないの?」
「櫻井さんが持っていてくれた方が、きっとまーちゃんも喜ぶから……」
「ありがとう。それまでに、あの絵に恥ずかしくないような部屋にしておくよ」
きっと、俺の部屋の惨状は雅紀から伝わっているんだろう……大野くんは、一瞬不思議そうな顔をしてから、あぁって呟いて吹き出した。
「なに笑ってんだよ」
「あ、いえ……ごめんなさいっ……」
「笑いながら謝るんじゃねぇ」
ますます肩を震わせてる大野くんをぽかって叩いて、顔を見合わせて笑った。
「あ、車のキー、取りに部屋に行くけど?」
マンションのエントランスで、大野くんを振り返る。
「俺、ここで待ってます」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
「あ、櫻井さん……」
エレベーターのボタンを押した瞬間に、名前を呼ばれて振り返る。
「信じて、いいんですよね?」
大野くんが、俺の目をまっすぐ見つめながら言う。
「そうありたい、と、思っているよ」
俺の答えに、大野くんがふにゃんって笑った。