鏡の前で何度も行ったり来たりをくり返す。
いや、そんなことしてても仕方ないんだけど。
もう1度、全身をチェックして、財布とスマホをポケットに突っ込んで外へ出た。
「潤くんが地味に見えるな」
駅で合流した松本と二宮と、3人で並んでキャンパスに入って、二宮がキョロキョロと周りを見渡してからぼそっと呟いた。
「どういう意味だよ、それ」
やっぱり今日も、独特なセンスの服を着ている松本が、二宮を睨む。
「どうって、言葉通りの意味ですけど?」
アート系の学校なだけあって、髪の毛も色とりどり、服装も色んなヤツらの集まりで、この中で雅紀と大野くんはどんなふうに過ごしてるんだろ……ってちょっと想像したら吹き出しそうになった。
「しょーちゃん!」
「うぉ!」
突然、背中から衝撃。
どっからどんな勢いで走ってきたのか……
ふわりと香る、雅紀のにおい。
「あっぶねーだろ、雅紀!」
「だって、しょーちゃん見つけたから嬉しかったんだもん!あ!松本さん、二宮さん、お久しぶりです!」
俺の背中にくっついたまま、雅紀が松本と二宮に挨拶をした。
「相葉くん、あいかわらず元気そうだね?」
「ブライダルのショーなんだって?楽しみにしてるね」
「ありがとうございます!あ、俺、準備の途中なんだった……」
そう言って、雅紀が俺に回した手にぎゅって力を入れて、よしって小さく呟いた。
「なに?」
「しょーちゃんチャージ」
くふふって笑って、俺の背中から離れる。
「さとちゃんの絵は、ここまっすぐ行って右側ね。知念くんのはそこの建物。俺のショーはこっちの建物、ね?」
「ん、ありがと。頑張って来いよ?」
「じゃあ、後でね!」
手を振って走っていく雅紀の背中を見送って、振り向いたらニヤニヤしてる松本と二宮がいた。
「『雅紀』に『しょーちゃん』、ねぇ……」
「『しょーちゃんチャージ』だって」
「……なんだよ……」
「翔やんさ……石橋叩くのも程々にしないと……叩いてる間にいなくなっちゃうかもよ?」
二宮の言葉に、松本も大きく頷いた。