「しょーちゃん?」
雅紀の声にはっとして、雅紀の肩をそっと押した。
コイビト、って……恋人、だよな?
ダメだろ、それは。
「髪の毛乾かして歯磨きしてくるから、お前はちゃんとベッドで寝てろ」
「しょーちゃん、後で来てくれる?」
「後で来るから……あれ、お前もまだ乾いてないじゃん」
まだ少し湿ってる雅紀の髪の毛を撫でて、ちょっと待ってろってドライヤーを取りに行く。
「乾かしてやるから、そこ座って」
「ありがと。なんか照れちゃうね」
くふふふふって、クッションを抱きしめて笑う。
真っ直ぐでサラサラな髪の毛に指を通して、髪の毛を乾かしてやった。
「……なぁ、なんで俺なの?」
思わずこぼれた言葉に、不思議そうな顔で雅紀が俺を見上げる。
「しょーちゃんだから、じゃない?」
今度は俺がやってあげるーって、俺からドライヤーを受け取って雅紀が笑う。
「しょーちゃんが、しょーちゃんだから、だよ」
「……全くもって理解不能なんだけど」
「そんなの、俺だってわかんないもん。
でも、しょーちゃんに会って、会った瞬間から、しょーちゃんはトクベツだったんだもん」
だから、しょーちゃんだからしょーちゃんなんだよって雅紀がもう1度言って、ドライヤーのスイッチを入れた。
「違ってたらどうすんの?」
「え?なにが?」
ドライヤーがうるさくて、雅紀の声が大きくなる。
「俺が、お前の思ってるような人間じゃなかったらどうすんの?」
「どういう事?」
「もっとトクベツな人が出てくるかもしんねぇぞ?」
雅紀がドライヤーを置いて、背中から俺を抱きしめた。
「しょーちゃんしか、いらないもん。意地悪言わないで?」
「……意地悪じゃないよ。自分のこと大事にしろって言ってんだよ」
「だからだよ」
「え?」
「しょーちゃんのそういう所、すごく大人でかっこいいし、大事にしてくれてるって分かるもん。
だから、俺……しょーちゃんのこと、好きって言うしかできないけど……」
いつか、しょーちゃんのトクベツになれたらいいなって思ってるんだって小さな声で言った雅紀が、またドライヤーのスイッチを入れた。