話をするには周りとの距離も近すぎて、黙ったまま、電車に揺られる。
こつんってまた、雅紀の頭が俺の肩に乗っかった。
「雅紀?」
返事の代わりに聞こえてきたのは、気持ちよさそうな寝息。
立ったまま寝るとか、どんだけだよ。
もう少しそっとしておいてやりたかったけど、窓の外を流れる見慣れた景色に肩を揺すった。
「雅紀、もう着くよ」
「あれ?くふふ。寝ちゃってた」
「相当疲れてんな」
「違うよ」
「え?」
聞き直した時にドアが開いて、また人に押されるようにしてホームへ降りる。
「ちゃんと寝てんの?」
「寝てるんだけどね……」
俺を見上げて、くふふって笑う。
「しょーちゃんに会うと、安心しちゃうんだよね。
嬉しくて、ドキドキするけど、安心するの」
なんでかなぁーって、ひとり呟いて、またくふふふふって笑う。
その言葉が嬉しいけど……
雅紀は本当に純粋で素直で、綺麗だ。
その想いが真っ直ぐすぎて、綺麗すぎて、受け取っていいのか……迷ってるまんまの俺。
「こら、まっすぐ歩け」
「はぁーい」
雅紀の腕を掴んで引き寄せる。
「しょーちゃんってさ、お母さんみたいだよね?」
「そこはせめて、お父さんにしてくれ」
「そこなの?」
「そこだよ!」
ふたりで顔を見合わせて、ぷって吹き出して笑う。
『キスとかその先』よりも、この笑顔をいつまでも見ていたいって思う。
「認めちゃえば?って簡単に言われても、なぁ……」
「ん?しょーちゃん、なんか言った?」
「……いや、なんも?」
早く着替えてー!お腹空いちゃったー!って、雅紀に背中を押されながら、マンションのエントランスの鍵を開けた。