スマホのアラームが鳴る。
バイトが終わるって言ってた時間。
車から降りて伸びをして、ちょっと様子を見に行くかって、海に向かう。
「ありがとうございましたぁー」
ビーチパラソルを畳んでいた細長い影が、俺を見つけて動きを止めた。
「しょーちゃん!」
ぶんぶん手を振る雅紀に近づいて、重そうに持っていたパラソルの端っこを持ち上げた。
「ありがと!」
「ん」
「あとこれ、しまったらおしまいだから!」
海の家の後ろにある倉庫にパラソルをしまって、また砂だらけになった身体を払う。
「雅紀、顔にも砂ついてんぞ」
「え!ホント?」
ごしごし手でこすったら、また砂がつく。
「お前なぁ……先に手を綺麗にするとかしろよ」
くふふふふって、笑ってる雅紀に手を伸ばして、鼻のてっぺんと頬についた砂を払ってやる。
……ここは、どうする?
「ありがとー、しょーちゃん」
そう言った雅紀の唇の上にも、砂粒。
「しょーちゃん?」
「まだ、付いてる……」
「え?どこ?」
顔をこすろうとした砂がついた手を止めて、
「また、付くだろ……」
親指で、そっと唇を触る。
……砂、取るだけだろ。
てか、キスだって数え切れないくらいしてきただろ。
なのに、なんで……
雅紀の唇に指を置いたまま、手が止まる。
ほんの、一瞬……だと思う。
コンマ何秒、の時間。
……俺は、どうしたい?
「とれた」
「しょーちゃん、ありがと!ね!今日は何を食べに連れて行ってくれるの?」
「この近くで漁師さんがやってるうまい店があるって聞いたから、そこにしようと思ったんだけど。アジフライとかちょーでっけーの」
「あ!聞いたことある!行ったことないけど!」
じゃあ、てんちょーに挨拶してくるね!って、振り向きざまにドアにぶつかった雅紀に爆笑しつつ、その背中を見送った。