「約束、したよ?」
「待ってるから、ちゃんと働いてこい」
「じゃあ、俺、頑張ってくる!」
また、砂を蹴散らして走り去った雅紀が、俺を振り返ってぶんぶん手を振る。
「前見ろって!危ねぇから!」
そう叫んだ瞬間に、盛大に砂を巻き上げて視界から消える。
「ほら、コケたじゃんか……」
案の定、な展開に思わず吹き出した。
がばっと起き上がって、砂をばさばさ払って、俺を振り返ってにかって笑う。
「あとでね!」
また、ぶんぶん手を振ってから、海の家へ消えていく。
「ほんっとに忙しいやつだなぁ……」
どうしたって緩む顔をなんとか手で隠して、車へ戻る。
「……てか、ジャリジャリじゃねぇかよ……」
ふと見下ろした自分の足が砂だらけで、さっきの雅紀を思い出してまた笑う。
笑ってから慌てて周りを見回したけど、こんな時間から海に来る人も帰る人もいないのか、駐車場に向かう道には人気がなくて、ふぅーって息を吐いた。
あっぶねー。マジで。
俺、相当怪しいヤツじゃねぇかよ。
車の横で、丁寧に砂を払う。
『ホンモノの、しょーちゃんだ』
『しょーちゃんに会いたすぎてマボロシ見たのかと思ったもん』
さっきからずっと、エンドレスリピートされてる雅紀の声。
本当に、そう思ってくれてた?
いや、アイツは嘘なんてつかないよな。
だったら……だとしたら……
松本の言っていた綺麗な人って、誰?
聞いてもいいのか……
いや、聞いてどうすんだ?
そもそも、なんで聞きたいんだ?
元気そうだった。
なら、大丈夫だろ?
日陰に停めておいた車の中は結構涼しくて、エアコンはつけずに、窓を開けてノートパソコンを取り出した。