「好きだ」
聞こえた声に目を閉じた。
あんなに、足りないって思ったのに。
そんな言葉じゃ足りないって思ってたのに。
おーのさんの口から零れたその言葉は、甘くて優しくて。
俺の心から溢れて、こぼれる。
俺の背中をぽんぽんって優しく叩いて、おーのさんが手を解いた。
「コーヒー、飲も」
「……ん……」
はいって渡されたカップを両手で包んで、琥珀色の上にゆらゆらと浮かぶ情けない自分の顔に笑う。
「なに笑ってんの」
「なんででしょうね」
ローテーブルの前に座ったら、おーのさんがしばらく迷ってから俺の隣に腰を下ろした。
「……え……」
「なんだよ」
「なんでもない、です」
縮めたくて仕方なかった距離が、あっという間に縮められて戸惑う。
「すげぇ、成績いいんだってな?」
「成績がいいかどうかは知りませんけど、課題とか楽しくてやってたら、先生達もどんどんのってきちゃって……あれもこれもやってみろって言うからやってたら、1年分のカリキュラムが終わってたんですよね」
おーのさんの方に身体を傾けて、体重をそっと預けた。
「あと、1年と3ヶ月だなぁ」
ぼそり、と呟く。
「なにが、ですか?」
「え?」
「え?って、なに?おーのさんがあと1年と3ヶ月って言ったんでしょ?今!」
俺の顔を見て、えぇ?って目を丸くして驚くおーのさんをぺちって叩いた。
「なにがあんの?1年と3ヶ月後に?」
聞いたら、わかりやすく目が泳ぐ。
「いや……あの……」
顔をぐいっと近づけて、居心地が悪そうなおーのさんの視線を捕まえた。
「俺と、エッチできるまで?」
「ば!ばか!お前の20歳の誕生日まで、だろ!」
「要は一緒でしょ?」
むぅって尖ったおーのさんの口にキスをする。
「オトナって、めんどくさいね」
「……」
「『真摯な交際関係』なら許されるんだよね?」
「にの……」
「俺はそのつもりだけど?」
「にの……!!」
「でも、おーのさんに迷惑かけるのは嫌だから、やめとく」
でも、キスはして?
『好き』って、たくさん言って?
俺の周りにいつも、アナタの愛が溢れるくらいに。
キスの合間に口ずさんだメロディ。
「それ、なんて歌?」
「『Love is all around』」
明日、CD買ってこよって、俺を真似てメロディを口ずさむアナタの唇をまた塞いだ。
