「シャワーありがと」
髪の毛を乾かしてリビングに戻ったら、相葉くんがゴリゴリ音を立てて何かしてる。
コーヒーのいい匂い。
「え、豆挽いてんの?」
「あ、おかえりー♡お水飲みたかったら冷蔵庫のやつ飲んでくださいね?」
「あ、じゃあ、もらいます」
冷蔵庫の中身も俺ん家とは全然違う。
ミネラルウォーターと牛乳と、作りおきのおかずとか……
ビール…は、ねぇよな。
未成年だし。ある訳ねぇ…
さっきの妄想を思い出すと、ぐあーって飲みたい気分だけど、仕方ない。
俺ん家のビールと水しか入ってない冷蔵庫が恋しい。
はぁ、って小さくため息をついて冷蔵庫を閉めた。
「……ほんとにちゃんと飯作ってんだな」
「くふふ、作ってますよ?」
座るとこ無いけど、ベッドにでも座っててくださいね?って言われて、さすがにそれはなぁ、と思ってラグの上に胡座をかいた。
「え、そんなの家にあんの?!」
相葉くんが棚から取り出したのはコーヒーサイフォン。
「これ、見てるの楽しくて」
くふふって笑いながらコーヒーをセットして、俺の横によいしょって腰を下ろした相葉くんが、クッションを抱き抱えてから俺を見上げる。
「海で会った時も思ったけど、髪の毛セットしてないと、可愛いですよね、櫻井さん」
「……かっ……」
カワイクなんてねぇ!って言おうとしたら、相葉くんがふんわりと微笑んで俺の髪の毛に手を伸ばした。
「ふふ、ふわふわー♡」
視線がぶつかる。
やばい、もう、ダメかも、俺。
ふぃ、と視線を外して相葉くんが俯く。
ダメだろって思うのに、右手が相葉くんの肩をつかむ。
「あ!お湯湧いた♡」
するり、と俺の手をすり抜けて相葉くんが立ち上がる。
行き場のなくなった右手を自分をぶん殴ってやりてぇ…って、思いながらぎゅって握った。