坂道の下、昨日と同じ場所に、俺よりも早く来てた、猫背気味のシルエット。
俺を見つけて、アイドル並みのキラッキラの笑顔で笑う。
「翔やん、おはよ」
「二宮さん、なんかいいことあったの?」
「カズでいいよ、翔やんも」
「じゃぁ、カズさん...どうしたの、今日...」
なにやらとっても機嫌よさげなカズさんがちょっと怖いんですけど。
「ふふ、翔やんもちゃんと伝えた方がいいよ」
口に手を当てて、にっこりと微笑む。
「えーと、ごめんなさい。全く話が見えないんですけども...」
「まーくんに、ちゃんと気持ち、伝えなよってこと」
「はぁ?!」
「っはようごさいますっっ!」
俺の声は、斗真のでっかい声にかき消された。
「お、おぅ...はよ...」
ニッコニコな斗真の横で、不機嫌な顔で潤が『はよっす』って、小さく言う。
「俺らも一緒していいっすか?」
「斗真、マジでうるせー。ほら、行くぞ。すいません、翔さん、何でもないです」
潤が斗真を引っ張って、斗真とぎゃーぎゃー言い合いながら歩いていく。
「...なんだ?アレ...」
つぶやいた俺に、
「新たなライバル登場だねぇ」
って、楽しそうにカズさんが言う。
...ライバル?
誰が?誰の?
「だから、早く伝えた方がいいって。あ、来た来た。まーくん、おはよ!」
カズさんが道の向こうに見えた雅紀に手を振る。
それに気付いた雅紀が笑顔で走ってくる。
今日も、かわいい。
んで、今日も、ネクタイおかしい。
「翔やん、顔」
「うるさいよ、カズさん」
今朝、妹にまで顔面崩壊とか言われたし、どうにもならないからもう、仕方ない。
「おはよーございます!」
「雅紀、またネクタイ変だぞ」
ほら、こっち来いって、手招きして、ネクタイを結んでやる。
カシャって、シャッターの音に雅紀とふたり、ビックリしてカズさんを見る。
「ふふ、いい写真、撮れたなぁー」
カズさんがスマホの画面を見て満足そうに微笑んだ。