「ちょっと、早かったよな...」
約束の30分前におーのさんの家の近くまで、来ちゃった。どんだけ、気合入ってんの、俺。
コンビニに入ろうとしたところで
「二宮?」
後ろから、呼び止められた。
「おーの、さん...」
スーパーの袋を両手に下げたおーのさんが、俺を見て、ふにゃんって、笑った。
勝手に家に行くとか言って、怒ってたりするかもって、ちょっと心配してたけど、いつもどおりの姿にホッとした。
「早いな...メシは?」
「すぐ帰るから、いい」
「そ?」
どうぞって、鍵を開けて入れてくれた部屋は、前に来た時と変わらず、あんまり物がなくて、ひとつだけ、見たことのないソファが置かれてた。
「ソファ、買ったんだ」
「おぉ、座っていいぞ。今、飲み物持ってくるから」
言われるままにソファに腰掛けた。
「おーのさん、飲み物とかいいから、こっち来てよ」
「大野先生、な」
ビニール袋からガサゴソと買ってきたものを取り出して、冷蔵庫にしまってから、おーのさんが、俺の目の前の床に胡座をかいて座った。
ペットボトルのサイダーをほれって、差し出す。
「おーの、さん」
渡されたペットボトルの水滴を指でなぞる。
「大野先生、だよ」
また、そう言ったおーのさんを、軽く睨んだ。
「先生と生徒、じゃなかったら、いいんでしょ?」
「なんの話だよ?」
トートバッグから、書類を取り出して、ローテーブルの上に置いた。
それを見て、おーのさんが眉をひそめる。
「なに...?」
「ちゃんと、見てよ」
おーのさんが、難しい顔をして書類を手に取った。