「にの?」
そっと、ドアを開けて、しーんとした家の中に声をかける。
「自分の家なのに、なんでこっそり入ってくんの?」
キッチンからひょこっと顔を出したニノが笑う。
「メシ、作ろうかと思ったけど、何もないから、どうしようかと思って」
「あぁ、メシならルームサービスで頼めるから」
俺の言葉に、ふぅん、ってつまんなそうに返したニノをそっと引き寄せた。
「なに?」
「...うん...」
「うん、って、なによ」
「...かず」
お前はなんで、おれの側にいんの?
なんで、どんなおれでもいいって、言ってくれるの?
「マサキ、帰ってきて良かったよね」
腕の中でニノが笑って、おれの背中にそっと腕を回した。
「...さとし」
久しぶりに呼ばれた名前に、背中に甘い痺れが走って...
キスをしようと顔を傾けて近づいた瞬間、ニノの左手で顔面を掴まれた。
「腹減ったから、頼んで、ルームサービス」
俺、やり方知らないしって、言いながら、おれの腕の中からするりと抜け出して、ソファに座る。
「かずぅ...」
情けない声を出した俺に、『メシは生活の基本だかんな?!』って、おれの真似をして笑う。
「メシ、食ったら覚悟しとけよ?!」
そう言って、ルームサービスに電話をした後、絶対終わんないから嫌だって、逃げるニノを捕まえてキスをして...
やっぱり止まらなくなって...
「だっっっから嫌だって言ったんだよ!」
すっかり冷めてしまったハンバーグを前に怒っているニノに、何度も謝りながらレンジでチンして...
「でも、良かっただろ?」
って、聞けば、真っ赤になって『そういう問題じゃないんだよ!』って、ハンバーグを口に放り込んだ。
「...かず...」
「.........」
ハンバーグを頬張りながら、おれをじろり、と睨む。
「おれもね、今、かずがいてくれればいいよ」
ニノはおれを睨んだまま、ごくん、とハンバーグを飲み込んで...
「も少し、言うタイミングとか、考えろや」
ぼそり、と呟いた。