「雅紀?」
「…しょーちゃん…」
振り返るとしょーちゃんがカバンを2つ持って
立っていた。
「帰ろ?」
優しい声で言う。
「うん」
ぎゅっと握りしめていた手の力がようやく抜けた。
「智くんはさっき、先生に呼ばれて行って、
先帰っていいよって言ってた」
「かずは今日、歯医者って言ってたよね」
「うん。で、潤が彼女と帰るって言ってたな?」
「「 ……… 」」
なんとなく、無言のまま並んで歩いた。
公園の入口で、
ぐい!
「わ!なに?!」
突然、しょーちゃんが僕の手を取った。
しょーちゃんは無言のまま、
僕の手のひらを見つめてから
そっと、反対側の手で僕の手のひらを撫でた。
「くすぐった…」
「気にすんな」
「え?」
「誰かに俺のこと、どう言われても気にすんな。
俺は大丈夫だから、お前は俺のことで
傷ついたり嫌な気持ちになる必要は無いから」
しょーちゃんに撫でられた手のひらには
さっき強く握りしめていたせいで、
爪の跡がくっきり残っていた。
「で、でも…」
「大丈夫だから」
「でも、悔しかったんだ…
しょーちゃんのこと、
何にも知らないくせにって…」
「雅紀が知ってくれてれば、いいから
雅紀がわかっててくれれば、いいから」
思い出したら悔しくて、
しょーちゃんの言葉が嬉しくて…
「しょー、ちゃん…
ダメだよ、そういうのはさ…
いちばん大事な人に言わなきゃ
カンチガイ、されちゃうよ?」
そう言うのが精一杯だった。