小早川深雪side*

実架はわたしの目を必死に見ているようで、
遠くを見つめているようにも感じられた。

実架の息がおかしいくらいに速い。

「みかっみかっ!」

わたしは必死に実架の名前を呼ぶ。

「はあ…はあっ…わた…しっ……死んだほうがいいのっ…かな…はあ…っ」

泣きながら息を乱している実架。

私が実架を医務室へと連れてゆこうとすると――

「…みゆ…ありが…と…」

一筋の涙を流して。
…実架は意識を手放したんだ。


私は必死に実架の頬をたたく。

勿論、実架は意識を失ったままだ。

私は震える手でリダイアルボタンを押す。
ちょうど陸に連絡をしていて良かったと心から思った。

「もしもし深雪?」
「陸っ陸っ…実架が!実架があ」

私は完全に取り乱していた。

「深雪?実架がどうした?なにがあった?」

私の動揺した涙声に。さすがに陸も異変を感じたようだった。

「深雪いまどこだ?まだ会社にいるのか?」

「三階の…資料室…はやくっ早く来てっ」

私は震える身体を止められずにいた。

―救急車…救急車!
私は119番を震える手で押した。

口が縺れながらもなんとか救急車を呼び。
駆け足の靴音が聞こえた。

「深雪、深雪どこだ!」
「陸っ陸!!!」

私は必死に叫んだ。

陸は私たちを見つけると顔を蒼白させた。
倒れた実架を見て。
「なにがあったかは後で聞く。
救急車は呼んだか?」
「いま呼んだわ。」

「実架を下に連れてく。
深雪は社長室に行って実架のことを伝えてきて。」

「わかった。」

そう言うなり。
陸は実架をお姫様抱っこした。

「実架っ…病院に行くからな、待ってろ!」

走り出す陸を背中に。
私も10階の社長室に走っていた。

事前に直通の内線に電話を入れておいたからか、
秘書の槙野さんはそのまま社長室に通してくれた。

「社長っ…実架がっ実架があっ」

「落ち着け小早川。実架になにがあった?」

私は泣きながらさっきあったことを説明した。
「――救急車は呼んだんだな?
俺たちも病院に行くぞ。」

社長は言いながら身支度を整えていた。
「病院に行ってくる。」

そう槙野さんに告げて。
私たちは社長室を出た。

一階にはたくさんのギャラリーと、
実架が担架に乗せられ運ばれているところだった。

陸はずっと、実架の名前を呼び続けていた。