夢を見た。
新曲に合わせて振りをつけてる夢。
流れるメロディーライン。ビートの効いたリズム。
印象的な音には自然と形が付いてくる。
あっ、ここのドラムは全部ひらおうか。いけない。つい細かくなってしまう。
思わず零れる笑み。
大体固まった所で一回動いてみる。片面の壁全部の大きな鏡の中、俺一人。
軽く流して。
いつの間に来たのか、松潤が横に居て、ニヤニヤ見てる。
「できた?」
言って、ペットボトルの水を飲む。
「まあ」
答えると、満足そうに口をニッと開いて、ストレッチを始めた。
そこへ、相葉ちゃんと翔くんが賑やかに喋りながらやって来る声が聞こえてきた。
「ホント。リーダーの振り付け久し振りだよねっ」
「ってか、踊ること自体久し振りだけどね」
「そうか。そうだね。あー。なんか嬉しい!」
って言いながら相場ちゃんが顔を出した。
「よっ」
俺が挨拶すると、相場ちゃんは入り口の所で固まった。
「リーダー!!…本物?」
その後ろから翔くんの笑い声。そして、
「何バカなこと言ってんのよ。早く入れよ」
と、ニノの声もした。
5人。
揃った。
鏡の中に5人。踊って。踊って…。
気づいたらステージ裏で5人肩組んでて。
音楽が流れる。どよめく。歓声が上がる。
「行くぜ!」
俺らは眩しいライトの中に出る。
そして歌い、踊る。
揺れるうちわとペンライト。笑顔も泣き顔も。よく見える。そうだったな。こんな景色だ。
懐かしさに目頭が熱くなった所で目が覚めた。見えたのは、涙に滲んだいつもの壁。
起き上がって静かな部屋を見回す。
戻れるんだろうか?ふとよぎるそんな思い。
もう40も過ぎたこんなおじさんを、ファンの子たちは待っていてくれるんだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えながら、窓の外、青い空を見た。
そこにはスポットライトの様に眩しい太陽が秋晴れに輝いて、少し目が眩んだ。
目を閉じると、さっきの夢の歓声が聞こえるような気がする。
“おーちゃん!”“大野くん!!”
ハッとして目を開ける。
“信じてる!”“待ってるよ!”
青空の向こうから声がする。
そうか。俺も信じる。俺の、俺ら5人の帰る場所。
でも今は…。もうちょっと…もうちょっとだけ、俺のワガママ。大丈夫かな?
“もちろん!!”
終わり